研究課題/領域番号 |
24360282
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
鵜飼 重治 北海道大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (00421529)
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研究分担者 |
佐々木 泰祐 独立行政法人物質・材料研究機構, 磁性材料ユニット, 研究員 (30615993)
大野 直子 北海道大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (40512489)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 熱・エネルギー材料 |
研究概要 |
Co-3Al-1.2Hf-1.5Y2O3(wt%)合金の微細組織の熱安定性を評価するため、焼結まま材、1000℃、1200℃で各240時間の熱処理を行った試料について、SEM、TEM、3次元アトムプローブ(3DAP)による組織解析を行った。焼結まま材は主にfcc構造を有するCoナノ結晶相よりなる硬質相と、hcp構造とfcc構造のCoが混在した粗大結晶粒相よりなる軟質相より構成される。酸化物粒子は、硬質相には高密度に分布するが、軟質相にはほとんど存在しない。STEM-EDS解析の結果、硬質相に存在する酸化物粒子には、3種の酸化物が存在することが確認された。なかでも、Al2O3相は、平均サイズが8nm程度と最も小さく、高密度に分散しており、一部は結晶粒内に存在する。粗大なY2Hf2O7、Y3Al5O12相が結晶粒界上に存在する。3DAPによる解析の結果、Al2O3相と母相の界面には、Y、Hfが偏析していることが確認され、solute-drag like effectによってAl2O3相が微細に保たれていることが示唆された。 Co-3Al-1.2Hf-1.5Y2O3合金は高温で安定なfcc構造から、冷却時にε-マルテンサイト変態によりhcp構造に変わるため、冷却後の組織観察からでは高温焼鈍で形成したfcc構造の再結晶粒サイズを評価できない。そのため、ε-マルテンサイト変態温度が室温以下になるように調整した4.3wt%Feを含有するCo-4.1Al-4.3Fe-1.5Y2O3-1.2Hf(wt%)を作製し、室温でもfcc構造が安定な試料を用いて再結晶挙動を評価した。1200℃で24時間の焼鈍を行った後のEBSDによるIPFマップから、高温で安定なfcc結晶の再結晶粒組織を室温で直接観察することに成功し、数十nmから数μmの再結晶粒で構成されていることを明らかにした。また、Feを含有しない通常試料との比較から、再結晶fcc結晶粒から数個のε-マルテンサイト粒が形成されることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初は3DAPを利用して酸化物粒子の分散状態の解析を計画していたが、サイズ、組成などを広範囲で調査するためにはSEM、TEMを用いた解析が必要不可欠であったことから、これらを併用することにより、硬質相、軟質相における酸化物粒子の分散状態をより精度良く評価することができた。また、高温焼鈍に伴う再結晶粒のサイズを直接測定することに成功した。これらのことから、当初の目的は達成していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
Co基耐熱材料として、より実用に近い組成を有するCr添加のCo-20wt%Cr-(5, 10)wt%Al-ODS合金を作製し、その組織評価を行う。特に、SEMを用いて硬質相、軟質相の分布状況、TEM、3DAPを用いて酸化物粒子の分散形態、結晶粒のサイズ分布について解析する。さらに実用材への適用の観点から、1000℃での高温高度と耐酸化性を評価する。
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次年度の研究費の使用計画 |
消耗品の合理化による経費削減、及び予定していた国際会議に参加しなかったことによる。 物品費:579,762円 旅費 :500,000円 その他:500,000円
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