研究課題/領域番号 |
24360282
|
研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
鵜飼 重治 北海道大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (00421529)
|
研究分担者 |
佐々木 泰祐 独立行政法人物質・材料研究機構, 磁性材料ユニット, 研究員 (30615993)
大野 直子 北海道大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (40512489)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 熱・エネルギー材料 |
研究実績の概要 |
熱力学解析プログラムを用いて1100℃でのCo-Cr-Alの3元系状態図を計算した。これに基づき、実用材への適用を想定して耐食性・耐酸化性を確保するため20 wt%Crをベースとし、主要な安定相がfcc固溶体相となるCo-20Cr-5Al (wt%)、及びfcc固溶体相とbcc構造のB2相が同量平衡するCo-20Cr-10Alの2種類の組成を選定した。これに1.5 wt%のY2O3と酸化物粒子微細化促進のため2.4 wt%のHfを添加したCo-Cr-Al基ODS合金を設計した。製造した5、10 wt%のAlを添加した2種類のCo-20Cr-Al基ODS合金について、SEM、TEM、3DAP、FE-EPMAによる分析を行った。2種類の合金とも、粗大結晶粒(fcc相)と微細結晶粒(fcc相とB2相)よりなるバイモーダル組織を有するが、Al添加量が多くなると微細結晶粒領域中のB2相の体積率が増加する。fcc相とB2相の組成は熱力学解析プログラムの予測値と一致することを確認した。一方、酸化物粒子としてナノサイズのY-Hf系酸化物とAl2O3の2種類が確認されたが、そのほとんどは微細結晶粒領域中に存在していた。粗大結晶粒の形成原因を詳細に調べ、放電プラズマ焼結時に粉末粒子の間で生じるプラズマ放電で局所的に融点以上に加熱され、いったん溶融したことに起因することを明らかにした。このような複相組織の力学特性解析に先立ち、実用材の最適材料設計において考慮すべき重要な高温酸化特性を評価した。高温酸化試験は900℃と1000℃において、最長225時間まで実施した。その結果、5 wt% Al材に比べ10 wt Al材で耐酸化性は大幅に改善されることが判明した。また10 wt% Al材では、900℃より1000℃の方が酸化重量増加は小さかった。これは、成長速度の遅いα-Al2O3が1000℃においてより早くから生成することに因ることを突き止めた。Co-20Cr-10Al基ODS合金の耐酸化性はODSでない溶解材である実用Co合金より大幅に優れ、Ni基ODS合金と同等であることを示した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
熱力学解析プログラムを用いた材料設計、試作、分析、特性評価を互いに関連付けて効率的に材料開発・評価を進めた。今年度は高温酸化特性を先行的に評価して、10 wt% Al添加が耐酸化性に有効であることを見出し、その機構を明らかにした。実用材の最適材料設計において極めて重要な知見を得たことから、当所の目的は達成していると考えられる。
|
今後の研究の推進方策 |
耐酸化性に有効なCo-20Cr-10Al基ODS合金を中心に、fcc相とB2相の体積割合と高温力学特性(硬度、引張強度)の関係を評価する。来年度は最終年度であることから、最終的に最適な材料成分と製造プロセスを検討する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
学会参加を見送ったことによる旅費の削減と消耗品の合理化による経費削減による。
|
次年度使用額の使用計画 |
物品費:500,000円 旅費 :500,000円 その他:415,309円
|