研究課題/領域番号 |
24360284
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
竹内 章 東北大学, 金属材料研究所, 特任教授 (40250815)
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研究分担者 |
網谷 健児 東北大学, 金属材料研究所, 特任准教授 (30463798)
湯葢 邦夫 東北大学, 金属材料研究所, 准教授 (00302208)
和田 武 東北大学, 金属材料研究所, 助教 (10431602)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 高エントロピー合金 / バルク金属ガラス / 合金設計 / 固溶体 / 結晶構造 / 稠密六方晶構造 / アーク溶解法 / ランタノイド金属 |
研究実績の概要 |
アーク溶解法によりボタン状のYGdTbDyLuおよびGdTbDyTmLu合金を作製してその結晶構造を調査した結果、世界で初めて稠密六方晶(HCP)構造の高エントロピー合金(HEA)の作製に成功した。液体からの合金作製に際して相分離を回避するため、合金選択に際しては、同素変態を許容した上で構成元素が室温でHCP構造を有することを条件として課した。さらに、構成元素の二元系状態図が全率固溶体型であること、ならびに、固液分離および固相間分離の組成領域ならびに温度領域が狭小である組み合わせを慎重に選択する方針で合金設計を行った。その結果、両合金に例示されるように、主にランタノイド金属から構成される合金を選択するに至った。原子寸法差を表すデルタ(δ)値は、作製したHCP構造のYGdTbDyLuおよびGdTbDyTmLu合金で、それぞれ1.4および1.6であり、混合エンタルピー(ΔHmix)はともに0 kJ/mol であることを示した。さらに、これらの合金の価電子濃度(VEC)は、3と算出され、HEAで初めてHCP構造のVECが定義された。これらの合金はHEA合金の合金設計指針を与えることで知られるδ-ΔHmix図において、HEAがプロットされるゾーンS内に両合金もプロットされることを示した。これらの結果から、今回作製したHCP構造のHEA合金は、これまでに見出された体心立方系(BCC)および面心立方系(FCC)構造ならびにそれらの混相からなるHEAと同類であることを明らかにした。この結果により、HEA相の定義をHCP相の固溶体に拡張することに成功した。ガラス合金および高エントロピーバルク金属ガラスからのアプローチにより、これまで見出すことができなかったHCP構造のHEAの開発に成功したことは、学術的観点からきわめて高い意義を有する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
バルク金属ガラスの合金設計を高エントロピーバルク金属ガラスに適用する本研究課題の合金設計により、これまで見出すことができなかった稠密六方晶構造の高エントロピー合金の開発に世界で初めて成功した。さらに、ペティフォーマップを利用した新規合金設計指針を確立した。本課題により得られた結果は、学術的にきわめて意義深く、高エントロピー合金の学術分野から高い評価を受けている。さらに、強磁性の高エントロピーバルク金属ガラスの開発にも成功しつつあり、全体として研究計画に沿った形で順調に研究が進展していると判断している。
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今後の研究の推進方策 |
研究項目として申告している(1)合金探査および(2)測定・分析・解析を行うととともに、(3)計算機科学予測の基礎的研究を発展させ、最終年度(平成28年度)をにらみ、(4)応用化・実用化の検証に着手する。特に、合金探査と応用・実用化の検証に注力する。具体的には、(1)合金探査では、強磁性高エントロピーバルク合金の創製を行うとともに、ペティフォーマップを利用した合金設計を発展させるため、予測の実験的な検証を行う。(4)応用化・実用化の検証として、溶射コーティング特性や耐食性の測定などの研究を展開する。
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