研究課題/領域番号 |
24360285
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
吉川 昇 東北大学, 環境科学研究科, 准教授 (70166924)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | マイクロ波 / 加熱 / セシウム / 層状珪酸塩 / イオン置換 / 微量分析 / 誘電加熱 / 除去 |
研究概要 |
H24年度の研究により、実験室的なシミュラント粘土質土壌としてバーミキュライトを選択する事ができた。バーミキュライトは2:1型層状珪酸塩鉱物として知られており、基本的な粘土化合物である。バーミキュライトは層間に水を含んでおり、TG-DTA測定によると700℃以上においても完全に除去できない事が分かった。誘電挙動には含有イオンとの間に深い相関関係があると考えられる。 バーミキュライトをCs溶液(例えば1000ppb)に浸漬し、撹拌すると5分以下で十分吸着される事が分かり、吸着したものを再度水に投入してもCsは溶出しない事がICP-MS(質量分析-誘導結合プラズマ発光分光)分析により判明した。この分析法を基本として、バーミキュライトにドープしたCsと種々のカチオン添加による影響について研究を行った。 H24年度までの研究により、Ca,Kの塩化物や炭酸塩などの添加によりマイクロ波で加熱する事によりCsの置換が進行する事が分かった。一方、例えばKClをバーミキュライトに添加する事によりマイクロ波の吸収特性が著しく向上する事も分かった。KClのみではマイクロ波加熱は十分に生じない。H25年度の研究により、マイクロ波加熱に対するKClの添加量に関し最適化する事ができた。本年度においては、本補助金で購入した交流インピーダンス計を用いて、直流から5MHzまでのインピーダンス(導電率)の測定を行ったところ、バーミキュライトに対し、30mass%のKClを添加する事で導電率が1桁以上も増加する事が分かった。その他、誘電率への影響に関しても調べ、マイクロ波誘電加熱と誘導電流加熱の寄与に関して検討する事ができた。この成果をMS&T’13(2013年度Materials Science and Technologyに関する国際会議、モントリオール、カナダ)で発表する事ができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究は物質工学的基礎研究であるが、現実の土壌に対するCs汚染に関して調べるためのシミュラントの選定に関してかなりの時間を費やした。その結果Csの挙動に関し、信頼のできる基礎データを取る事ができるようになったと考えられる。またH25年度までの研究に依り,本研究を遂行するための実験系の確立を行う事ができた。当初考えていたCs気化除去に対し、イオン置換を利用する方針に変更を行ったのであるが,この課題に関しても系統的な基礎研究が必要である事が判明した。 次にマイクロ波加熱処理を解析する上で必要となる基礎物性として物質の誘電率、導電率が重要であるが、それらの測定を試み手法を確立する事ができた。この技術をベースとしてイオン置換に要する種々の添加物混合試料について系統的に調べる事ができた。 Csとのイオン置換を有効に生じさせるカチオンについて絞り込む事ができた。またこれらの塩を用いる事により、マイクロ波により比較的低温(~300℃)の加熱でCsの除去が可能である事が分かった。H25年度においては、これらの塩とマイクロ波加熱との相関関係に関しても調べる事ができた。
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今後の研究の推進方策 |
添加物によるバーミキュライトの基礎物性変化について測定し、マイクロ波加熱とイオン置換速度について議論する事はある程度可能に成っているが、現在の段階ではCsの脱離メカニズムに関しては必ずしも明確にするには至っていない。その理由として、Csの脱離が純粋にイオン置換だけで生じているのか,その他に高温加熱によるバーミキュライトの構造変化の影響があるかもしれない。また添加した塩の溶融に伴う影響等も考慮する必要があるためである。H26年度においては、これらの視点から更に研究を展開して行く予定である。 また現在の段階では、イオン置換したCsは水に溶解除去する方向になっている。これは現実への応用として多量の汚染水処理という新たな問題を抱えてしまうことになる。本研究の立場として、マイクロ波加熱の援用により最小限の水に濃縮除去が可能である操作条件を探索したいと考えている。またマルチモードアプリケータを用いて、マイクロ波による大量処理への可能性について検討したいと考えている。
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次年度の研究費の使用計画 |
代表者が所属する研究室の都合により、マイクロ波印加試験を実行するための実験装置の移動を行う必要があった事、また分析機器の不具合などが重なり、実験の遂行が遅れたため、当初予定の助成金の執行が遅れている。 H26年度には、当初計画に従ってCs添加処理を行ったバーミキュライト(層状珪酸塩)のマイクロ波処理のマイクロ波印加処理およびその評価のために必要な機器、物品の購入、成果発表の旅費や研究資料の収集等に使用する予定である。
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