研究課題/領域番号 |
24360287
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
喜多 浩之 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (00343145)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 表面・界面物性 / 磁性 / 先端機能デバイス / 強磁性体 / 界面磁気異方性 |
研究概要 |
金属強磁性体薄膜/酸化物界面にはたらく界面磁気異方性が外部からの電界の印加によって変化する現象が注目されている。本研究では,この効果の大きさを決定する因子として,界面を構成する元素の種類やその化学状態の影響の解明を目指している。 前年度までに,様々な酸化物とCoFeBの界面に対してこの効果を観察していたが,今年度は化学状態に自由度を持つTiO2を酸化物に用いた場合について検討を加えた。その結果,電界印加によって界面磁気異方性が変化するだけでなく,その変化の一部が電界開放後にも不揮発的に残留することを見出した。この残留成分の正負は印加電界の向きで決まり,且つ,その大きさは電界の大きさに応じて変化した。また印加時間を短くしたパルス電界によっても現れることから高速な応答にも期待できる。電界による異方性変化の方向を考慮すると,TiO2中の正に帯電した酸素空孔が電界によって分布を変え,界面近傍の化学状態を変えることに起因する効果と予想される。この効果を増大をさせることは,電界による磁気異方性変化を増大させる新しい指針として期待できる。 また,研究当初から検討を行ってきたバックゲート構造よりも,上下の積層順を入れ替えたトップゲート構造の方が,酸化物の種類を変えたときのCoFeBとの界面磁気異方性の違いをより明確に反映していることが判明した。界面酸化物がAl2O3とY2O3の2つの場合を比較したところ,Al2O3の方が界面磁気異方性が強く表われた。この違いはY2O3とCoFeBの界面に1~4nmのAl2O3を挿入することで徐々に界面磁気異方性が回復したことからも確かめた。この現象は主としてAlとYの電気陰性度の違いを反映したものと考えて理解できる。次年度は,トップゲート構造を利用しながら,電界による異方性変化に与える界面材料の効果についての系統的な調査を進める方針である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年度までに順調に各種の酸化物やフッ化物などの検討が進捗していたのに加え,本年度は想定外の発見として電界誘起の磁気異方性の不揮発変化という新しい現象の発見があった。界面を構成する元素による効果についての知見が当初の想定を超えて広がりつつある点で,順調に進展している。 また,当初用いていたバックゲート構造に比べ,トップゲート構造の方が,酸化物の種類による影響がより顕在化することも新たに見出された。この原因は不明であるものの,界面を構成する元素の効果を明確化する実験のためには,トップゲート構造の試料が相応しいということがわかった。このことにより,最終年度(H26)に系統的な調査を行うための準備が順調に整ったと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
当初の研究計画で想定していたバックゲート構造は,XPSなどの化学状態解析手法と磁化測定を組み合わせる上で好都合であったものの,実はトップゲート構造の場合の方が,酸化物種を変えた時の磁化特性への影響がより明確に現れることがわかった。そこで,当初計画を変更し,トップゲート構造を中心とした検討を進めることとする。特に初年度に検討を行った材料群も改めてトップゲート構造で調査し直し,種々の材料による効果を系統的に比較・調査する予定である。
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