研究課題/領域番号 |
24360291
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
板倉 賢 九州大学, 総合理工学研究科(研究院), 准教授 (20203078)
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研究分担者 |
西田 稔 九州大学, 総合理工学研究科(研究院), 教授 (90183540)
光原 昌寿 九州大学, 総合理工学研究科(研究院), 助教 (10514218)
中野 正基 長崎大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (20274623)
FARJAMI Sahar 九州大学, 総合理工学研究科(研究院), 助教 (20588173)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 永久磁石材料 / 熱間加工磁石 / HDDR磁石 / 走査電子顕微鏡 / 透過電子顕微鏡 / EDS組成分析 / 結晶配向組織 / 組織制御 |
研究概要 |
本研究では、水素処理(HDDR)法、熱間加工法、パルスレーザー蒸着(PLD)法で作製した異方性Nd-Fe-B系磁石材料について最新顕微法を統合した「実次元超顕微解析」を行って、高い保磁力を保ちつつ磁化を高める組織制御技術の確立をめざす。 本年度はまず、HDDR法における異方化機構についての知見を得るために、HDDR処理におけるHD過程の①初期と②終了時、およびDR過程の③定圧脱水素終了時と④完全脱水素終了時の4つの試料を準備し、走査電子顕微鏡(SEM)の電子線後方散乱回折(EBSD)法および透過電子顕微鏡(TEM)のプリセッション電子回折(PED)法を用いて広範囲の結晶方位解析を行った。その結果、試料③の時点でNd2Fe14B微細粒への再結合がほぼ完了しており、各微細粒のc軸もこの段階でほぼ配向していることがわかった。一方、試料①では分解相同士や未分解相との間に明確な結晶方位関係は認められず、試料②では未分解相の残存はまったく観察されなかった。以上のように、SEMレベルの広範囲の方位解析においてもNdH2, α-Fe, Fe2Bの3つの分解相に特別な方位関係などは認められず、再結合Nd2Fe14B粒の方位を決める新たな分解相の存在が示唆する結果が得られた。 次に、高配向と低配向のNd2Fe14B微細粒組織が得られる2種類の熱間加工用液体急冷(MQ)フレーク原料の微細組織を高分解能SEMおよびTEMにより調査した。高配向磁石が得られるNd組成の高い試料の方が、粗大なNd酸化物相を多量に含んでおり、これが熱間加工時の異常粒成長を誘起することが判明した。したがって、熱間加工時に粒界滑りを促進するNdを粒界部に多く含んだMQ原料を、できるだけ酸化させず熱間加工に供することで、結晶配向度と保磁力の両方を改善できるものと推察できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
HDDR磁石については、結晶構造が複雑なNd2Fe14B微細粒組織についてはSEM-EBSD法の適用は困難であるが、プロセス途中の相分解組織についてはSEM-EBSD法で解析できるようになり、PED法に比べて広範囲を簡便に解析できるため、この解析法が当初の計画以上に威力を発揮しつつある。一方、熱間加工磁石については、予想以上に時間のかかる解析となったが、全体的には申請書に記載した研究の目的はおおむね達成できている。
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今後の研究の推進方策 |
HDDR法については処理過程前半のHDプロセスにおける組織変化に注目し、SEM-EBSD法によるさらに詳細な方位解析を行うと共に、特徴的な箇所を集束イオンビーム(FIB)加工で抜出して最新鋭のTEMによる元素(特にボロン)の挙動などの解析を行って、方位配向を左右する原因を解明する。また、PLD厚膜磁石についても解析に着手し、配向組織に及ぼすTa基板の役割やPLD蒸着条件などについての知見を得る。これらの結果をまとめて、高い保磁力を保ちつつ磁化を高める組織制御についての知見を得ていく予定である。
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