研究課題/領域番号 |
24360296
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 独立行政法人物質・材料研究機構 |
研究代表者 |
大沼 正人 独立行政法人物質・材料研究機構, 量子ビームユニット, 主席研究員 (90354208)
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研究分担者 |
古坂 道弘 北海道大学, 工学研究科, 教授 (60156966)
大場 洋次郎 京都大学, 原子炉実験所, 助教 (60566793)
平 徳海 独立行政法人物質・材料研究機構, 先進高温材料ユニット, 主任研究員 (80354207)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 量子ビーム / 強度・靭性 / ナノ構造 |
研究概要 |
本研究はナノサイズの析出物やその前駆体であるクラスターについてサイズ・数・組成を定量化し、未解明な点が多い鉄鋼材料の析出初期過程の詳細解明を目的とする。初期過程研究の難しさは透過電顕(TEM}では回折コントラストが小さなナノサイズ不均質(ヘテロ)組織を観察することが鉄合金では困難である点にある。そこで本研究ではマトリクスとヘテロ組織との原子数密度および組成の差を検出する小角散乱(SAS)法を利用する。これまでSAS法では組成情報を取得できなかったがX線と中性子を複合した新手法(合金コントラスト法)を活用することで、サイズ・数の情報に留まらず、組成情報にも踏み込んで解析する。これをX線および中性子ともインハウスの装置利用で進め、材料開発にタイムリーかつフレキシブルに対応し、析出初期過程の詳細に迫る。 以上の目的の下、本年度はSCM440(炭素量0.4wm水準の鉄鋼材料について、中性子小角散乱測定を韓国原子力研究所の研究炉を使用して行った。この測定に使用した試料と同一のものを北大インハウス小型中性子源小角散乱で測定を行った。これは大型施設を用いた中性子小角散乱データに対してインハウス中性子システムのデータの質を検討することを目的としている。測定に先立ち、今年度は試料と検出器間にヘリウム置換した飛行管を設置し、バックグラウンドを低減させた。また、データ取得の回路システムを改修し、安定した測定を行えるようにした。以上の結果、インハウス測定により、十分なクオリティの小角散乱プロファイルを得られることを確認した。以上の結果を受け、今後の実験効率の向上に、ラボX線小角散乱装置をインハウス中性子測定装置に隣接させることが有効であると判断し、同装置の北大への移設を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
バックグラウンドの低減、回路の安定化によりインハウス中性子小角散乱システムの測定データの質が大幅に向上、X線・中性子複合解析に使用可能なレベルに計画通り、到達した。さらに、X線装置の移設により、X線および中性子小角散乱測定を徒歩1分圏内にある装置群で測定できる環境を整えた。析出初期過程の検討にあたり、析出無しの比較材として急冷材よりも低温で焼きなました試料が鉄鋼材料では適していることを見いだした。 以上の理由により、開始年度の目標を達成した。
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今後の研究の推進方策 |
代表者が北海道大学に移動したため、25年度からは北海道大学でX線および中性子小角散乱を、電子顕微鏡観測をNIMSで行うことなる。小角散乱解析は北大および京大で実施する。
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次年度の研究費の使用計画 |
北海道大学へのX線装置移設に伴う、X線小角散乱装置冷却システムの改造が必要となり、これにおよそ300万円の費用が生じる。これにより、世界初のインハウスX線・中性子小角散乱測定環境を構築でき、小角散乱測定および解析の加速を図る。
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