研究概要 |
本年度は,マルチスケール構造を集積化した立体微細素子実現のため,フェムト秒レーザ光とフォトレジストの特異的相互作用の解明とプラズモン共鳴素子の設計・特性評価を行った.高繰り返し周波数を有するフェムト秒レーザ光を低開口数レンズでフォトレジスト内に集光すると,特定の条件下でチャネル状伝搬が生じ,同時に露光分解能が著しく劣化する.光改質部の屈折率変化量を見積もったところ,光回折実験から10-3オーダと非常に大きな値となる.実験で用いた化学増幅型レジストでは,露光だけでは通常,屈折率変化を伴う架橋反応はほとんど生じることはない.しかしながら,高繰り返しレーザ照射では熱蓄積効果によって二光子プロセスによる光反応とそれに続く架橋反応が照射だけで生じたと考えられ,このことを赤外分光法によって確認した.理論解析から,入射レーザ光は,この光改質部で導波モードに高効率に結合し,チャネル伝搬することが明らかとなった.また,同様の解析から,入射光と導波モード間の電界分布を変調することで,結合効率を大きく抑制し得ることが分かった.実際,高開口数レンズで集光した際には,チャネル伝搬は観測されなかった.この機構解明の他,金属周期構造を作製し,その光学特性評価を行った.厳密結合波解析から周期500nm,溝深さ30nmのAu周期構造が伝搬型プラズモン生成に最適と考え,リソグラフィによるその作製を行った.フェムト秒レーザでの光学特性評価を行ったところ,波長分散による見かけ上の結合効率低下が見られたが,設計値に近い特性を確認した.今後,このAu周期構造の構造パラメータを制御し,プラズモン電場の更なる増強を試みる.
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