研究課題
本年度は,マルチスケール構造を集積化した立体微細素子実現のため,フェムト秒レーザ光とフォトレジストの特異的相互作用の解明とプラズモン共鳴素子の設計・特性評価に取り組んだ.これまでの研究から,非線形光リソグラフィは従来法では困難な立体基板上での微細構造形成を可能にすることを明らかにしてきた.これまで透明誘電体内あるいは近傍でのフェムト秒レーザ非線形リソグラフィは多く報告されているが,電界集中が起こりやすい金属構造の影響は知見がほぼなく,その探索が必要である.フェムト秒レーザの発振波長オーダの周期を有するAu構造上では多光子反応が進行しやすく,数百倍程度の局所的電場増強を確認した.また,その起源は,理論解析から表面プラズモン共鳴と推察された.硝酸銀水溶液中での多光子還元をモデル反応として検証したところ,金属薄膜上ではレーザ集光部の電場分布が支配的となるが,周期構造上では,レーザ集光部の電場分布よりは,表面プラズモン共鳴で生じた電場分布が重要であることが強く示唆された.表面プラズモン共鳴の角度依存性を検証するため,多光子造形法によって電場可変プラズモン共鳴素子の開発に取り組んだ.外部電場によって変調可能な樹脂製3Dマイクロスプリングを搭載したマイクロ金属グレーティングを形成した.これは静電力による励起レーザ光の入射角を実効的な変調を可能とする.今後,これまでに得られたフェムト秒レーザ光と強く相互作用するプラズモン場の設計指針をもとに,増強基板の作製を試みるとともに,その機能検証ならびに非線形光リソグラフィの高度化を進める.
2: おおむね順調に進展している
当初目的であった,非線形光リソグラフィにおける重合部での光熱反応の影響ならびに金属ナノ構造の影響について重要な知見を得ることに成功しているため.
これまでに得たフェムト秒レーザ光と強く結合する金属ナノ構造の探索を更に進めるとともに,非線形光リソグラフィの更なる高度化を検討する.
研究は概ね順調に推移しているが,H25年度5月に大学異動があり,研究計画の若干の変更が生じている.より研究スケジュールの実態に合わせた研究経費使用のため,H25年度予算の一部(消耗品購入費)を次年度へと送ることとした.H25年度に行う予定であった実験の一部を次年度へと送り,試薬などの消耗品購入に使用する予定である.
すべて 2014 2013
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (5件) (うち招待講演 1件)
Journal of Non-Crystalline Solids
巻: 383 ページ: 66-70
10.1016/j.jnoncrysol.2013.04.055
第30回センサマイクロマシンと応用システムシンポジウムプロシーディングス
巻: 1 ページ: 5PM3-PSS029-1-4