マルチスケール構造を集積化した立体微細素子実現のため,フェムト秒レーザ光とフォトレジストおよび金属構造との相互作用の特性評価に取り組んだ.単なる光造形とは異なり,立体化によって優れた素子機能を生み出すには,金属構造上での多光子リソグラフィが必要である.しかしながら,これまで透明誘電体内あるいは近傍でのフェムト秒レーザ多光子リソグラフィは多く報告されている一方で,電界集中を起こしやすい金属構造周辺での知見はほぼなく,その探索が必要である. 硝酸銀溶液にAuおよびAg金属周期構造を浸し,フェムト秒レーザ照射を行った.金属構造サイズは,100~500 nm程度とした.金属平板上では容易にマイクロ粒子に成長析出したのに対し,析出物のサイズは1~2ケタ程度小さくなり,析出量や位置はレーザ照射条件によって制御することが出来た.液中でのゼロ次反射率測定および理論解析から,金属構造上でのこのような特異な光挙動は,表面プラズモン共鳴によって金属構造上で生じた強電場によって多光子還元反応が進行したためと考えられる.金属構造の形状によってプラズモン波の共鳴状態が変化するが,本研究でのプラズモン援用多光子還元では,析出した金属ナノ粒子は,元の金属構造に固定付着し,結果として金属形状が変化する.その光学特性に与える影響を検討するため,落射蛍光観察を行い,金属構造周辺の蛍光強度分布を測定した.レーザ照射によって金属ナノ粒子が析出した付近では,周辺部より強い蛍光が観察され,より効果的にプラズモン共鳴が起きることが示された.
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