研究概要 |
わが国の各基盤産業に欠かせない希土類元素の本質的役割を電子・原子レベルで理論的に解明し,希土類元素に可能な限り頼らない,あるいはより有効に活用する新たなモノづくり技術を発展させるために,これまで独自に開発してきた従来の第一原理的手法より1000万倍高速な超高速化量子分子動力学法シミュレータについて,希土類元素の電子状態計算収束性を向上させるとともに,希土類含有材料の化学反応ダイナミクス解明を行う.これにより,世界初の希土類元素含有材料の理論設計を指向した超高速大規模量子ダイナミクスシミュレーション技術を構築することを目的としている. 平成24年度は,超高速化量子分子動力学法における占有電子数拘束アルゴリズムの多原子系への拡張と一般化を検討してきた.希土類元素のみならず,特に貴金属元素を含む触媒系に対して超高速化量子分子動力学法の適用可能性を検証していく過程で,電子状態計算部分の省力化により高速化を実現するためのパラメータについて,これを適切に構築することによって,多数の原子であっても精度よく適用できることが明らかになってきた.具体的には,密度汎関数法に基づく第一原理分子動力学法によって求められた結合エネルギーと各原子軌道への電子配分を精度よく再現するように,原子軌道関数の空間的広がりを表すゼータ指数と,原子軌道のイオン化ポテンジャルを,電荷の関数としてパラメータ化することに成功した.実際に,セリウムを含む大規模系のシミュレーションを行い,精度よく高速に計算できることが示された.
|