研究概要 |
本研究では、金属ナノ粒子と有機分子との有機無機ハイブリッド材料において形成される自己組織化ナノ構造へのレーザー光照射によって、ナノテクスチャ構造を有する金属表面形成の新手法の開拓とナノ構造形成機構の解明を行うことを目的とした研究を行った。微細なテクスチャを有する表面においては,超擾水性などの機能が発現する。金属ナノ粒子を用いた金属表面のテクスチャリング法の開拓によって,耐久性の高い機能表面の実現が期待される、有機基で修飾されたAgやAu等の金属ナノ粒子と種々の有機置換基を有するPOSSとをトルエン溶媒中で混合し.基板上にスピンコート製膜することによって.金属ナノ粒子/POSS会合体による自己組織化構造を有する前駆体膜を形成した。これらにレーザー光を照射・走査することにより,ナノテクスチャ構造を有する金属膜を形成した。レーザー光源としては,ナノ秒,ピコ秒およびフェムト秒パルスレーザーを用いて,レーザー光照射条件の影響を検討した。Agナノ粒子/POSSハイブリッド膜において形成される自己組織化構造はPOSSの有機置換基の影響を顕著に受け,シダ状構造,球状構造,およびキュービック構造が観測された。シダ状の自己組織化構造を有する銀ナノ粒子/OV-POSSハイブリッド膜に対して,ナノ秒パルスレーザーを用いたシンタリングを行った場合には,自己組織化構造部が凸型で残存した表面構造となった.顕微ラマンスペクトルの測定からは,アモルファスカーボンに帰属されるブロードなラマンバンドとSi-O-Si構造に帰属されるラマンバンドが観測された。このような構造の形成は,ナノ秒パルスレーザーによるシンタリングの場合には,レーザーアブレーションよりも熱的なプロセスが主であるためと考えられた。これに対して,ピコ秒パルスレーザーによるシンタリングの場合には,レーザーアブレーションによって,自己組織化構造部が凹型となった表面構造が形成された。
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