酸化セリウム系燃料極として、Ni金属粒子が分散した構造をもつNi-(CeO2)1-X(LnxOy)X(Ni-LnDC) (Ln = Sr or Sm)サーメットの作製とアノード特性評価を行った。試薬原料を混合した粉末試料を高温焼成し、固相間反応により (CeO2)1-X(LnxOy)X固溶体試料を作製した。比較試料のCeO2粉末原料も同条件で焼成した。同一の多孔性組織を有するサーメット燃料極基質をイットリア安定化ジルコニア電解質ディスク表面に焼成法で作製した。この燃料極試料に対して、Niイオンが溶存する金属硝酸塩溶液中における紫外光照射によるこれら金属の微細粒子が析出する光電析処理を行った。単セル(Ni-LnDCセル及びNi-CeO2セル)について、メタンに対する発電特性比較を行った。Ni-LnDCセルはNi-CeO2セルよりも高い電流密度と長時間の発電性能安定性を示した。光電析処理を行った燃料極をもつNi-LnDCセルと無処理のNi-LnDCセルでは、発電特性に顕著な差は確認できなかった。光電析による微細Ni金属粒子の低い均一分散性、及び固体電解質とNi金属粒子との活性な反応界面形成が不十分だったことが要因として挙げられる。作製試料に対して、高分解能走査電子顕微鏡観察と昇温脱離解析を行った。2次電子像観察結果より、光電析金属微粒子がLnDC結晶粒子の特定部位(エッジ及びコーナー)に数十ナノメートルサイズで選択的に存在することを明らかにした。サーメット試料粒子表面に吸着したメタン、一酸化炭素、水素に対する昇温脱離解析により、共存するNi金属粒子表面への一酸化炭素分子の吸着結合に対してLnDCが緩和作用をもたらす機構を明らかにした。以上により、Ni金属粒子の存在形態が燃料極におけるメタンのアノード酸化反応活性を支配するメカニズム解明の基礎的知見を得ることができた。
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