研究課題/領域番号 |
24360307
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
伊藤 和博 大阪大学, 接合科学研究所, 准教授 (60303856)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | Cu配線 / Cu合金膜 / マグネシウム / 抵抗率 / 密着性 |
研究概要 |
Cu合金膜と熱処理を用いて、300℃程度の低温と30分程度の短時間で、低抵抗・高密着なCu合金膜がガラス基板上に作製できるか検討した。このプロセスでは、ガラス基板との高い反応性(高い酸化物生成能)と、Cu合金膜中の合金元素の拡散距離が他の元素と比較して長いことが求められ、両条件を満たす合金元素としてMgを選択した。次に、Cu合金膜中のMg濃度を決定した。合金元素としてTiを選択した場合、高濃度であっても熱処理時間をかけると合金膜の抵抗率は3μΩcm以下まで低減した。これは、Tiが合金膜表・界面に偏析したことによる。合金元素としてMgを選択した場合、Mg濃度が2.0at.%では、合金膜の抵抗率は3μΩcm以下まで低減しなかった。合金膜中に残留するMg濃度が高いことが原因であると考えらえる。Mgは合金膜表・界面に偏析するが、熱処理時間が経過しても偏析量に顕著な増加が認められなかった。Mg濃度が0.5at%とすると、合金膜の抵抗率は300℃、30分の熱処理後に3μΩcm以下まで低減した。 熱処理時間を3時間まで増やすと、2.7μΩcm程度まで低減することを確認した。Mgの合金膜表界面への偏析はSIMSとRBSを用いて確認した。密着性は単軸引張応力により評価した。このプロセスを用いることで、熱処理前に10-25MPa程度であった剥離時の引張応力が35-55MPaまで増加し、Mgの界面偏析による有意な密着性向上を確認した。SIMSの結果では、表・界面でのMg偏析ピークに重なるようにO偏析も確認でき、Mg酸化物形成が予想された。断面TEM観察と電子線回折により、Cu(Mg)/ガラス界面に、[111]配向したCu合金膜と方位関係を持つようにMgO層が形成していたことを確認した。この界面層形成が密着性向上に寄与したと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
Cu(Mg)合金膜を用いることで、低抵抗・高密着なCu合金膜をガラス基板上に300℃、30分で作製できることを実証した。SIMS・RBSを用いた膜深さ方向の濃度分布分析と断面TEM観察と電子線回折により、合金膜中のMg濃度低減、粒成長、界面でのMgO反応層の形成を実験的に確認し、低抵抗・高密着性が得られた原因を明らかにした
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今後の研究の推進方策 |
300℃より低い熱処理温度でのプロセスでも低抵抗・高密着なCu合金膜をガラス基板上に作製できるか、できる場合はその機構について明らかにする。手法としては、本年度と同様に、SIMS・RBSを用いた膜深さ方向の濃度分布分析と断面TEM観察と電子線回折を用いる。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初申請額より交付額が減少しているため、薄膜成膜用真空機器の増設を断念し、現有機器を用いて研究を遂行することとしたため、経費を節約できた。Mg合金元素の偏析分析には、Tiの場合に有効であったRBS法の感度が低く、SIMSやTEM/EDSなどの依頼分析が有効であることがわかり、2年目以降の依頼分析費が枯渇しないように、基金の残額を有効に利用することとした。
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