研究概要 |
H24年度は,まず「射出成形時の木質素材の流動に及ぼす前処理および熱履歴の影響」を解明するために「射出成形性評価システムの構築」および「前処理・熱履歴の影響評価」を行った.具体的には,構築中であった射出成形性評価システムに関して,金型部の作製および追加を行った.作製した装置を用いて100%煮沸竹粉の射出成形実験を行い,金型部で成形が可能であることを確認した.また,主に180℃および200℃で処理時間を変えて竹粉の蒸煮および煮沸実験を行い,処理粉末の圧粉および射出実験から再接着性および流動性の評価を行った.流動性に関しては,200℃の20分煮沸処理で最も向上した.180℃の処理では,200℃の処理に比べて流動性が低下するが,処理時間の増加によって流動性が向上した.再接着性の評価は,硬さ試験で行った.硬さ試験の結果は,射出性試験の結果と異なる傾向を示したことから,再接着性と流動性の発現には異なる現象・成分が関与していると考えられる.また,フローテスタを使用して,流れ値の評価を行った.結果から,熱処理粉末の流れ値には試験時の温度と保持時間の両者が影響することがわかった.これは,射出実験時に熱履歴が影響していることを示唆しており,フローテスタによる流動性試験から成形に及ぼす熱履歴の影響を検討することができると考えている. 次に「高強度化と柔軟化によるWPCの耐衝撃性向上」を目的として,「繊維強化によるWPCの高強度化と耐衝撃性」および「柔軟プラスチックの利用によるWPCの柔軟化と耐衝撃性」を調査した.まず,130℃で蒸煮した100%ブナ粉末の圧粉成形によって,円板を作製し,硬さおよび密度の関係を明らかにした.また,ホットプレス成形金型を作製し,ホットプレス成形によって100%スギバークの平板を作製した.また,PPと竹のWPC材の衝撃試験を行い,基本的な衝撃特性を把握した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「射出成形時の木質素材の流動に及ぼす前処理および熱履歴の影響」に関しては,補助金によってフローテスタを購入できたため,熱履歴の影響などの調査が既に勧められており,当初の計画以上に進展させることができている.一方,「高強度化と柔軟化によるWPCの耐衝撃性向上」に関しては,作製していたホットプレス用の装置が破損するなどして,やや遅れ気味である.これらを総じて見て,おおむね順調に進められていると自己評価した.
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今後の研究の推進方策 |
H24年度は,研究室に配属された学生数が少なかったため,当初予定していた体制(研究協力者大学院生2名,学部生1名)を組むことができず,大学院生1名,学部生1名の研究協力のもと研究を実施した.H25年度からは,当初の計画通りの体制で研究を実施できる見通しであり,研究が推進できると考えている.
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