研究概要 |
オーステナイト系ステンレス鋼SUS304(18cr8Ni)および純チタンの板材に対し,プラズマ窒化やガス窒化処理を行い,硬度がHV1200以上の表面硬化層を形成する条件を検討した.ステンレス鋼に関しては,HV1300程度の硬化層を形成する条件を明らかにすることができた.純チタンについては,表面粗さの増加が大きいが,HV1200程度の硬化層を形成することができた. 次に,表面硬化層にナノ構造を加工する技術を検討した.即ち,フェムト秒レーザーをスポットで固定照射し,レーザー強度と照射パルス数を変化させた時の照射痕の形状をSPMで測定することにより,アブレーション閾値や加工速度を求めた.また,FE.SEMにより,ナノ構造の間隔や形状を観察した.なお,未照射の材料表面にも同様な照射実験並びに評価を行い,硬化層との違いを明らかにした.金属に関するナノ構造の形成機構は未解明であり,ステンレス鋼およびその窒化層のナノ構造について国際会議等で発表し,国内外の研究者と議論し情報を交換した. 次に,精密3軸ステージによるレーザースキャン技術を応用し,硬化層表面に15mm角以上の面積に平面状に均一なナノ構造を加工する条件を検討した.また,レーザー照射面に対し,ナノメカニカル試験装置により,微小荷重域のナノインデンテーション硬度やマイクロスクラッチによる摩擦係数を求め,窒化層の機械的性質に与えるレーザー照射の影響を明らかにした.ナノ構造が加工された表面硬化層に対し,購入物品のボール・オン・ディスク型摩擦摩耗試験機により,大気中乾式下で摩擦係数の変化をモニタリングし,ナノ構造のトライボロジー特性に与える効果の検討を開始した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画に基づいて実験を開始し,ステンレス鋼と純チタンに対し窒化処理により表面硬化層を形成することができた.次に表面硬化層に対してフェムト秒レーザーを照射し,ナノ構造を平面状に大面積で加工する条件を明らかにした.また、ナノ構造加工面に対し,ボール・オン・ディスク型摩擦摩耗試験機による大気中乾式下の試験を開始した.特にステンレス鋼の窒化層のナノ構造に関しては,興味ある現象を見出し,学会に発表した.
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今後の研究の推進方策 |
合金鋼としてはステンレス鋼以外に金型用鋼,チタン合金としてはTi-6Al-4Vに対し,プラズマ窒化・浸炭処理を行い,硬化層表面にナノ構造を加工後,DLC等の固体潤滑膜を被覆する複合表面改質技術を開発し,耐摩耗性,離型性,耐かじり・焼付き性等に優れた高機能表面改質技術の開拓に結びつける.
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