研究課題/領域番号 |
24360314
|
研究機関 | 室蘭工業大学 |
研究代表者 |
平井 伸治 室蘭工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (10208796)
|
研究分担者 |
葛谷 俊博 室蘭工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (00424945)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | CZTS / 熱電材料 / 固相反応焼結 / 光学顕微鏡組織 / 無孔化 / スタナイト化合物 |
研究概要 |
本研究では、焼結体の無孔化を目的とし、予め固相反応焼結した不定比のCZTX焼結体(以下、一次焼結体)を粉砕した微細な粉末を出発原料に用い、再度焼結を行うことにより不定比CZTX焼結体(以下、二次焼結体)を作製することを目的とした。 従来の研究に倣い、市販のCu2S、ZnS、SnS2の粉末を所定の組成になるよう混合した混合粉末を黒鉛ジグに充填し、パルス通電焼結装置を用いて、7×10-3 Pa以下の真空雰囲気中において焼結した。焼結圧力は50 MPa、焼結温度は973 Kとし、1 hr保持することにより最初の焼結体を作製した。次に、この焼結体を予め砕いたものを遊星型ボールミル(アルミナ製容器(500 ml)、アルミナ製ボール(φ10 mm、φ35 mm、全量3 kg、)を用いて粉砕した。粉砕時間は1hrとした。そして、この粉砕粉を出発原料に用い、最初の焼結条件にて焼結を行い、焼結体を作製した。 Cu2.1Zn0.9SnS4の焼結温度が773 Kの場合の一次焼結体と二次焼結体の光学顕微鏡組織から、液相が介在しない固相のみの焼結であるにも係らず、この他の組成においても空孔の形成は減少し、さらに結晶粒径が減少する傾向が確認された。また、773 Kと較べて973 Kの場合、結晶粒径が増加するものの空孔はさらに減少した。見掛けの密度についても、光学顕微鏡組織を反映し、一次焼結体よりも二次焼結体、さらに焼結温度が773 K よりも973 Kの場合に増大した。同一組成の場合の収縮率曲線は、一次焼結の場合、SnSの軟化によるものと推定される673 K付近から始まる急激な収縮が確認されたのに対し、二次焼結の場合は同じ673 K付近から始まる緩やかな収縮が確認された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、高融点であり、資源供給に不安がなく環境負荷のない元素から構成される高温域熱電材料を開発することを目的としている。そのなかで、今年度は薄膜太陽電池の光吸収層として期待されているほか、熱電材料としても高い性能を示すスタナイト型多元系硫化物(Cu2ZnSnS4)について、熱電性能の向上に対して問題となる、焼結体中に生成する空孔の抑制策について検討した。また、フラックス法による化学・非化学量論組成の硫化物単結晶体を育成することも目的としているが、こちらは、フラックス法による非化学量論組成のランタン硫化物の育成を試み、その成果について特許申請した。 この方法について概説すると、モル比でSnS:β-La2S3が0.95:0.04の混合物2 gを表面が平滑な高密度黒鉛坩堝に充填し、さらにこの坩堝を石英アンプル管(φ25 mm、長さ140 mm)の片側に入れ、真空雰囲気中で封管した。次に、このアンプルを1373 Kまで加熱した後、12 hrs保持することにより融体の均質化を図った。その後、蒸発したSnSを凝縮させるために石英アンプル管の反対側の温度を1343 Kまで降下させ3~6日間保持した。保持後はアンプルを室温まで炉冷した。その結果、3日間保持後の場合、フラックスの蒸発は終了しておらず、フラックスの融着塊の表面において赤色を呈する針状の結晶(長さ:約4.2 mm)と角状の結晶(長さ:約1.5 mm)の育成が確認された。6日間保持し、フラックスを完全に蒸発させた後は赤色の結晶のみが残り、この結晶について単結晶自動X線構造解析装置を用いた分析を行ったところ、立方晶のLa2S3単結晶の育成を確認している。 上記から明らかなように、目的に向かって研究は順調に進んでいる。
|
今後の研究の推進方策 |
スタナイト型多元系硫化物のCZTSについては、完全な無孔化には至らないものの、一次焼結体を粉砕した微細な粉末を出発原料に用い、再度焼結した二次焼結体は、とくに高温で焼結した場合に空孔の形成が抑えられることがわかった。これらの焼結体の熱電特性を早急に評価する必要がある。また、希土類のLaについては、資源供給に不安がある材料から一転し、一連の軽希土類は過剰供給になりつつある。このような背景から、フラックス法による化学・非化学量論組成の硫化物単結晶体を育成に希土類硫化物を選択することは、本研究の主旨に沿うものであると考えている。立方晶のLa2S3単結晶については、育成条件に依存することが予想されるフラックス成分であるSnの単結晶への固溶について明らかにした後、Snの溶解が抑えられた試料について熱電特性を評価する。
|
次年度の研究費の使用計画 |
非化学量論組成を決める際に化学分析が必要であるが、化学分析を自前で行うことができるようになり、外注の必要性がなくなった。 固相反応焼結をパルス通電焼結を用いて行っているが、焼結体の無孔化のために80MPaの圧力下で焼結を行う必要がある。そこで、高強度黒鉛ジグの購入に充当したい。
|