研究課題/領域番号 |
24360315
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
内藤 牧男 大阪大学, 接合科学研究所, 教授 (40346135)
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研究分担者 |
阿部 浩也 大阪大学, 接合科学研究所, 准教授 (50346136)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 省エネルギー / セラミックス / リチウムイオン二次電池 / 正極材料 / ナノ粒子 / 複合粒子 |
研究概要 |
外部加熱を必要としないワンポットプロセスによって、リチウムイオン二次電池正極材料を構成する多孔質複合粒子を直接合成できれば、画期的な省エネルギー製造プロセスが実現する。申請者らは、原料粉体界面への圧縮・摩擦的作用に基づく局所的特異場を利用して、これまでに陽イオンを二種類含む複合酸化物ナノ粒子の非加熱合成に成功している。そこで本研究では、近年注目されている陰イオン骨格がリンと酸素の二種類のイオンから成るリチウム系材料にこの方法を適用した。平成24年度には、正極材料としてリン酸鉄リチウムナノ粒子をモデル材料に選定し、原料粉体として、炭酸リチウム粉体、シュウ酸鉄粉体、並びにリン酸二水素アンモニウム粉体を使用した。その結果、これらの粉体を、外部加熱を施さずに機械的処理を行うことにより、リン酸鉄リチウムナノ粒子を合成することに成功した。そこで平成25年度には、本方法によるナノ粒子の合成に及ぼす諸条件を基礎的に検討するために、既に合成実績のあるランタン・マンガン系の複合酸化物を用いて、原料粉体の種類、並びに処理エネルギーなどが合成プロセスに及ぼす影響を検討した。その結果、原料種によって合成プロセスは大きく影響されること、また処理エネルギーが大きいほど、合成は短時間で進むことなどを明らかにした。そして、これらの結果を踏まえ、リン酸鉄リチウムナノ粒子の合成実験を行った。その結果、炭酸リチウムの代わりにリン酸リチウム粉体を使用することにより、短時間でナノ粒子を合成できることを示した。さらに、これらの原料粉体にカーボンナノ粒子を微量添加することにより、リン酸鉄リチウムナノ粒子の合成と同時に、合成されたナノ粒子とカーボンとが複合化した多孔質複合粒子の合成に成功した。得られた複合粒子からコインセルを試作し、充放電特性等の評価を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の計画であるリン酸鉄リチウムナノ粒子の短時間での合成実験に成功している。さらに、リン酸鉄リチウム合成に使用する三種類の原料粉体にカーボンナノ粒子を微量添加することにより、リン酸鉄リチウムナノ粒子の合成とともに、合成されたナノ粒子とカーボンとが複合化した多孔質複合粒子の合成に成功している。また得られた複合粒子からコインセルを試作して、充放電特性等の評価を行うことにより、複合粒子特性との関係を解析している。以上の結果は、本年度の計画を満足するものであることから、おおむね順調に進展していると自己評価した。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度の研究成果に基づき、各種プロセス条件がリン酸鉄リチウム複合粒子の組成、並びに構造に及ぼす影響を検討する。また得られた複合粒子から実際に正極を作製することにより、電池特性と複合粒子特性との関係を明らかにする。さらに、本研究で提案した複合粒子作製方法を、他のリチウム系材料にも適用し、正極材料のワンポット製造プロセス基盤技術の確立を目指す。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度は、既に研究が進んでいるランタン・マンガン系の複合酸化物ナノ粒子の合成実験をモデル事例として検討を進めた。得られた実験結果を基礎として、リン酸鉄リチウム複合粒子の作製を試みたところ、当初計画よりも極めて効率的に実験を推進できた。その結果、当初計画よりも少ない予算の執行により、リン酸鉄リチウム複合粒子の合成に成功した。以上の理由により、当該助成金が生じたものと思われる。 平成25年度は、既に研究が進んでいるランタン・マンガン系の複合酸化物ナノ粒子の合成実験結果を基礎として検討を進めた結果、当初計画よりも極めて効率的な実験的検討により、リン酸鉄リチウム複合粒子の合成に成功した。その結果、上記に記載した当該助成金が、平成26年度に繰り越された。 平成26年度は、この助成金も有効活用することにより、研究計画の達成を目指す。特に、リン酸鉄リチウム以外のリチウム系材料にも、幅広くこの作製方法を適用することにより、正極材料のワンポット製造プロセス基盤技術の確立を目指していく予定である。
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