研究概要 |
本研究では,新たに開発する極低温He物理吸着TPD-MS測定法を計算科学と併用することで,合理的な多孔体細孔壁のラフネス同定法を構築し,表面と空間という,統合的なナノ空間の特性評価手法に結実させることを目指している。本TPD-MS装置は,物理吸着系への極低温環境(~4K)の導入によって,吸着力の弱いHe原子に対しても,その物理吸着エネルギーが相対的に熱エネルギーをはるかに凌駕するような状態を創出することで,昇温脱離法を適用可能とする着想に基づくものであり,ラフな表面に吸着したHe原子について,その吸着エネルギーに応じた脱離温度の検出を可能とする。本手法によって得られるエネルギー分布と材料構成化学種の特性から,ナノ多孔体の原子ラフネスを推測する手法を新規に構築することを目的とする。 H24年度では,当初の研究計画を前倒しして,本TPD-MS装置の設計,製作・納入を完了しており,既に装置の立ち上げ作業を開始している。また,メソポーラスシリカMCM-41電子密度分布からの Atomisticmodel構築とその吸着挙動について,分子シミュレーションおよび吸着等温線測定の両面からのアプローチを推進しており,MCM.41が持つ細孔壁ラフネスを適切にAtomisticmodelに組み込むことで,その特異な毛管凝縮現象を明らかとすることに成功している。この成果の一部は既にAdsorption誌に論文が掲載されており,現在,第2報の執筆を進めている。また本成果によって,Atomistic modelが持つ吸着エネルギー分布の評価結果と,極低温He物理吸着TPD-MS測定による実験結果とを比較検討するための準備を完了することができた。
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