研究実績の概要 |
液液分離による多分散polyethylene(PE)溶液からの溶媒・モノマーの回収と、PE製品の高品質化を目的として、昨年度に明らかになったhexane(C6)+多分散PE 2成分系の相平衡関係の知見を踏まえ、本年度は、ethylene(C2)+C6+多分散PE 3成分系の液液相挙動および液液平衡の測定を行うとともに、Sanchez-Lacombe状態方程式(S-L EOS)による相関・推算を行った。多分散PE試料は、昨年度と同一の、重量平均分子量30 kg/mol, 多分散度3.94のものである。 相挙動の測定は温度473 K, C2組成10 wt%, PE組成4~10 wt%(C2フリー)で行ったところ、相分離圧力は2成分系の場合に比べて約10 MPa高くなった。また、この結果をS-L EOSで良好に相関することができた。 相平衡の測定は温度473 K, 圧力11 MPa, C2組成10 wt%, PE組成7.5~20 wt%(C2フリー)で行い、併せて両相のPEの分子量分布も測定した。その結果、以下の事項が明らかになった。1) 仕込みPE組成の増加に伴い、両相のPE組成は増加する。2) S-L EOSによって相挙動の相関を行うことで、3成分系の相平衡を良好に推算することができる。3) 2成分系の場合と異なり、PEリッチ相のPE組成は相分離曲線よりも低圧側になるが、これはS-L EOSによる予測と一致する。4) 溶媒リッチ相にはPEの低分子量成分が、PEリッチ相には高分子量成分が多く含まれ、液液分離によってPE製品の高品質化が可能である。5) ethyleneの添加は相分離圧力には大きな影響を及ぼす(1 wt%あたり約1 MPaの上昇)が、両相のPE組成とPE分子量分布への影響は小さい。
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