研究概要 |
今年度はプロパン脱水素膜反応器に搭載する,水素分離膜の開発を行った.シリカプレカーサーとしてテトラメトキシシラン(TMOS),フェニルトリメトキシシラン(PTMS),ジメトキシジフェニルシラン(DMDPS)を採用し,それぞれのプレカーサーに対してCVD製膜反応条件を最適化し,水素,窒素,メタン,プロパン,4フッ化炭素の透過試験を行ったところ,いずれの膜も高い水素選択透過性を示すことが明らかとなった.3種類の膜を比べるとTMOS膜の水素透過率はやや小さかったが,450℃における水素/プロパン選択率はいずれの膜も1000を超える. 上記3種類の膜を用いて,白金/アルミナ触媒を膜内側に充填した膜反応器を作製した.これらの膜反応器を用いてプロパン脱水素反応試験を行ったところ,TMOS膜を搭載した膜反応器において平衡シフトが認められた.しかし転化率は徐々に低下し,2時間後には平衡転化率を下回る転化率しか得られなかった.PTMS膜やDMDPS膜を搭載した膜反応器においては,TMOS膜と比較して高い水素透過率を有するにも関わらず,平衡シフトを確認するには至らなかった.この理由として,触媒活性の急激な低下が考えられる.実際,気体非透過のSUS管に同様の触媒を充填したpacked-bed型の反応器を作製しプロパン脱水素膜反応器試験を行い,膜反応器の反応試験結果と比較したところ,膜反応器の方がコーキング量が多いと示唆される結果を得ている.すなわち水素引き抜き効果が転化率の向上に効くと同時に,触媒にとって過酷な環境におかれている可能性が高い.この点については,次年度以降,反応条件や触媒調製条件などをチューニングすることで対応したいと考えている.
|