研究課題/領域番号 |
24360324
|
研究種目 |
基盤研究(B)
|
研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
向井 紳 北海道大学, 大学院・工学研究院, 教授 (70243045)
|
研究分担者 |
荻野 勲 北海道大学, 大学院・工学研究院, 准教授 (60625581)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | 化学工学 / 反応・分離工学 / セラミックス / 環境技術 / 環境材料 / ゾル-ゲル / セシウム / ヘテロポリ酸 |
研究概要 |
原発事故以来、広い範囲に飛散した放射性セシウムが大きな社会問題となっている。セシウムの除去には吸着法が主に用いられているが、安全に除去を行い、除去に伴う廃棄物の量を最少化するためには、吸着材のセシウム選択性を極限まで向上させ、材料内の濃縮度を精密に制御する必要がある。そこで本研究ではセシウムと選択的に不溶性塩を形成するヘテロポリ酸(HPA)をシリカゲル中に凍結を利用して分散固定化することでセシウム選択性が非常に高く、濃縮度を自由に制御可能な分離材の開発を目指している。 本年度はまず固定化するHPAのスクリーニングを行った。その結果、12モリブドリン酸(PMol2)が固定化するHPAとして適していることが分かった。PMol2を分散させたゾルをゲル化させ、得られた湿潤ゲルを一方向に凍結したところ、PMol2が分散固定化されたマイクロハニカム状モノリス体が得られた。これをセシウム除去に用いたところ、ある程度の除去は可能であったが、固定化されているPMo12が一部分解して溶出することが分かった。そこで不溶性のPMo12のアンモニウム塩を代わりに分散固定化してみたところ、セシウムの除去が可能で、塩の溶出がほとんど起きないモノリス体を得ることに成功した。 得られたモノリス体に液体を流通させた際に生じる圧力損失を測定したところ、非常に低いことが確認できた。これは高いスループットが求められる材料にとって非常に有利な特性である。またナトリウム等のイオンが共存しても、セシウムに対する選択性はほとんど変わらないことも確認できた。さらに破過曲線を測定したところ、モノリス体内で形成される吸着帯の長さが非常に短いことが確認でき、期待していたように分離材としての応答が非常に速いことが分かった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初予定していた項目について全て検討を実施し、期待していた結果、項目によっては期待していた以上の結果が得られている。また比較のために不溶性フェロシアン化物を活性点としたマイクロハニカム状モノリス体の試作も実施し、その性能を評価したが、使用環境によってはヘテロポリ酸塩を活性点に利用したもの以上の性能を有することも確認できた。これにより、様々な環境に対応可能な一連のセシウム分離材が得られたことになる。
|
今後の研究の推進方策 |
来年度以降は得られた材料のセシウム分離能の向上を図るとともに、マイクロハニカム状モノリス体に新たな活性点を導入することで、希薄な状態で存在する有価物の分離回収が可能な分離材の開発も目指す。さらに活性点としてHPAを導入した試料については触媒としての利用についても検討を行う予定である。
|
次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用額は14,120円となっているが、この金額の物品は平成24年度内に発注し、既に同年度内に納品されている。支払が平成25年度に入って行われているために計上されている金額である。発注、納品ベースでは研究費は計画通り使用されており、平成25年度も当初の計画通りに研究費を使用する予定である。
|