研究概要 |
X線励起発光法とX線吸収法を組み合わせた新しい分光手法を開発し,固体触媒における触媒活性種のみのXAFSを測定することをめざした.つまり,局所構造の平均的情報しか与えなかった従来のXAFS法の弱点を克服し,化学状態選別型XAFSに発展させることに重点を置いた. 固体表面に形成された不飽和サイトや点欠陥は,X線励起によって各構造や電子状態に固有の発光を真空紫外~近赤外領域に与えることが知られていることから,このX線励起発光測定を行うための分光測定システムを放射光施設において構築した.分子科学研究所極端紫外光実験施設(UVSOR)におけるXAFS(XANES/EXAFS)測定のためのビームタイムを確保するために,まず共同利用申請を行い,ビームライン担当者とも相談するなど具体的な対策をたてた.分光測定システムは,ロータリーポンプと軸流分子ポンプを備えた真空チャンバー部と,放射光照射時に試料からの発光を集光するための導入レンズ部、分光部・検出部から構成された. この分光測定システムを用いて,典型的な固体内欠陥を対象としたX線励起発光測定を行った.具体的には,アルミナ(A1_2O_3),シリカ(SiO_2)中の酸素欠陥等の固体内欠陥を対象としたX線励起発光測定を行った.この際,入射X線のエネルギーを連続的に変化させながら各欠陥由来の発光の強度変化を測定し,XAFSと同等な微細構造スペクトルが得られることを確認した.
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