研究課題
基盤研究(B)
有機合成プロセスの飛躍的な環境負担低減や希少資源の有効利用、省エネルギーの達成等が期待できる固体触媒の開発が望まれている。本研究では、複眼的視点からのグリーン有機合成プロセスのユビキタス化を指向して、触媒活性種の自在変換法を確立し、飛躍的に広範な反応に適用できる環境対応型触媒を開発するとともに、触媒構成元素のユビキタス元素への代替を検討している。本年度の検討の結果、以下の成果を得た。1.触媒活性種の構造解析とその変換制御法の確立申請者らが開発したセリア担持Ru触媒においては、触媒調製時に形成されるRu=0種等の表面金属種が、反応開始段階あるいは触媒の前処理中に高い触媒機能を有する活性種に変換されることが特徴的である。そこで、調製直後の触媒表面や、様々な条件下での前処理過程において発生する触媒活性種の構造を調べるため、セリア担持ルテニウム、イリジウム、およびロジウム触媒等についてX線吸収スペクトル、赤外線分光分析のその場解析や、X線光電子分光分析、水素昇温還元法、熱重量分析等の手段によって、前処理条件が担持金属種の還元状態に及ぼす顕著な影響を明らかにした。さらに、ジルコニア担持ルテニウム触媒によるシリルカップリング反応においては、溶出金属種が触媒として機能するが、反応終了後にはジルコニア表面に吸着するため、実質的な金属溶出を大きく抑制出来ることを見出した。2.多様な有機合成反応への適用アルデヒドによるアルキンのヒドロアシル化反応や、アルケンの位置特異的カップリング反応、さらにメタセシス型生成物を与えるビニルシラン類のホモおよびクロスカップリングに有効なセリア担持ルテニウム触媒等を見出した。さらに、担持ロジウム触媒によるシリルカップリング反応や、担持イリジウム触媒による炭素-窒素結合形成反応について、それぞれ有効な触媒候補を見出す等の予備的成果を得た。
1: 当初の計画以上に進展している
交付申請書に記載した平成24年度の実施計画をほぼ完全に遂行し、前処理条件に依る担持金属種の変化を明らかにする等、期待通りの成果を挙げている。さらに、メタセシス型生成物を与えるビニルシラン類のホモおよびクロスカップリングに有効な固体触媒を既に見出すなど、当初の計画以上に進展している。
当初の予定をやや前倒しして、平成25年度以降は、より多様な有機合成反応への適用を図るとともに、鉄系複合酸化物触媒を活用した触媒の開発に取り組む。
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