研究概要 |
本研究の目的は,我々のこれまでの抗体工学研究を基盤とした,バイオテクノロジーの幅広い領域で応用可能な新規蛍光免疫測定原理の確立と応用にある。本年度は新規免疫測定素子Quenchbody(Q-body)に関し,新規に購入した蛍光分光光度計を用いて以下の検討を行った。まず色素としてこれまで用いてきたTAMRA以外にATTO520,R6Gといったローダミン系色素が使え,R6Gはより良い応答を示し,ATTO520はより親水性で扱いやすいことがわかった。また新規に数種のscFv型Q-bodyを作製し,蛍光色素ならびにTrp蛍光の抗原結合依存的変化を検出した。また,新たな試みとしてscFv類似の構造をもつリガンドrapamycin依存的に会合するFKBP-FRBのQ-body化を試行し,高感度なrapamycin検出に成功した。 次に,合成量の少ない無細胞タンパク質合成系によらずに大量にQ-bodyを合成する方法の検討を行い,色素導入用にN末側にCys残基をもつタグ配列を導入したFab断片を大腸菌で大量発現・精製し,これにマレイミド修飾色素をラベルし,精製することで合成可能なことを見出した。抗オステオカルシン抗体FabをTAMRAでH鎖1箇所ラベルした場合に最大3倍,ATTO520でH/L鎖をダブルラベルした場合,最大7倍の応答性を得ることが出来た。特に後者ではダブルラベルで顕著に応答性が向上したが,これは色素間クエンチの効果と考えられる。さらにこれを用いてU2OS Osteosarcomaのオステオカルシン産生の蛍光顕微鏡観察を試み,Vitamin D3依存的な蛍光のイメージングに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度実施予定項目のうち,蛍光寿命については装置の都合で測定ができていないものの,その他の項目では予定通りか期待以上の結果が得られている。さらに,最終年度に実施予定であった細胞イメージングについても,細胞は異なるが原理的に可能な事を示す事ができた。
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