研究概要 |
交互くし型マイクロバンドアレイ(IDA)電極と導電性基板を組み合わせたマイクロ流路型の誘電泳動デバイスを作製し,細胞の誘電泳動挙動の調査を行った.溶液の導電率が80mS/m以下の場合,高周波数側(MHz領域)で正の誘電泳動(p-DEP)が,低周波数側(kHz領域)で負の誘電泳動が作用した.IDA電極表面に抗体を固定化し,抗体に対する表面抗原を発現している細胞をp-DEPにより電極に集積化し,免疫反応による捕捉を行った.その後,周波数を切り替えて,未反応の細胞を電極間ギャップへと移動させて分離した.捕捉率は約50%であった.固定・分離に要する時間は2分程度であり,マイクロプレートを用いた通常の細胞アッセイ(30分)と比較して劇的な短縮を達成した.高導電率(400mS/m)溶液を用いると捕捉率はさらに向上する.しかし,高導電率溶液中ではp-DEPが作用しない.これは,理論計算と一致した.そこで,rn-DEPを用いて可逆的に2種類のパターン作製が可能な手法を開発し,捕捉率の向上を行った.抗体固定化バンド電極Aとバンド電極Bの電極間ギャップにn-DEPを用いて細胞を配列して免疫捕捉する.その後,バンドBの印加電圧をゼロにすると,未反応細胞はバンドB上へと分離される.この手法を用いると70%程度の細胞を捕捉できた.さらに,配列化細胞のswing法を導入した.バンドBの印加電圧強度を5秒ごとに20vppから18vppへと減少させた.すると,細胞の配列化位置がわずかにバンドB側にシフトした.その後,電圧をゼロにするとほとんどの細胞が免疫捕捉され,捕捉率は84%に向上した.誘電泳動操作にswing法を組み合わせることにより,細胞の免疫捕捉率を大幅に向上させることができた.また,腹腔内免疫法によって免疫化されたマウスのB細胞を用いて同様の実験を行い,極めて迅速にB細胞を捕捉できることを示した.さらに,立体構造特異的モノクローナル抗体作製のための遺伝子組換え抗原発現ミエローマ細胞および抗原発現CHO細胞の効率的作製にも成功した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
遺伝子組換え抗原発現ミエローマ細胞および同CHO細胞を効率的に作製できることを示した.誘電泳動法による細胞操作技術では,印加電圧,周波数,溶液導電率の最適化を行い,免疫捕捉率の向上を達成した.免疫化マウスの脾臓細胞からB細胞のみを識別できた.平成25年度に計画していたホールアレイ電極の作製にも着手し,ホールやギャップサイズの検討を試みている.
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