研究課題/領域番号 |
24360340
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
境 慎司 大阪大学, 基礎工学研究科, 准教授 (20359938)
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研究分担者 |
田谷 正仁 大阪大学, 基礎工学研究科, 教授 (60144127)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 再生医療 / 組織工学 / マイクロカプセル / iPS細胞 / 撹拌培養 / アルギン酸 / ヒドロゲル |
研究概要 |
平成25年度には、まず、前年度に開発した従来の半分の所要時間で中空カプセルを作製することのできる方法を用いて、ヒトiPS細胞のカプセル化を前年度に引き続いて実施し、未分化性を維持した状態での培養の可否および継代培養の可能性に関して検討を行った。静置条件での培養においては、ヒトiPS細胞が当該カプセル内にて増殖することを細胞の形態変化およびカプセル一個あたりのミトコンドリア活性の経時変化の測定により確認した。また、未分化マーカーの1つであるOct-3/4をターゲットとしたフローサイトメーターを用いた検討を実施した結果、未分化を維持した状態で増殖していることを確認した。カプセル内で増殖したiPS細胞の継代に関しては、培養中の諸操作中の細胞のロスなどにより、十分な検討を実施することはできなかった。この点に関しては次年度以降に検討を行う予定である。 新たなカプセル材料の探索としては、アルギン酸よりも疎水度が高いと考えられるカルボキシメチルセルロースおよび、アルギン酸よりもより細胞との相互作用が強いことが期待されるヒアルロン酸誘導体を用いて、前年度に開発した方法によってカプセルが作製可能であり、動物細胞がその内部で増殖可能であることを確認した。 撹拌培養におけるスケールアップに関する検討としては、カプセル膜を構成するアルギン酸誘導体の濃度と撹拌培養時の撹拌速度と壊れるカプセルの割合に関する相関を調べた。その結果、適当な撹拌速度、アルギン酸誘導体濃度を設定することにより、10日間の培養で80%以上のカプセルが壊れない条件を見出すことができた。さらに、撹拌翼を使用しないタイプの培養器を試したところ、カプセルがほぼ壊れることなく細胞を培養できる条件を見出すこともできた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
撹拌培養を細胞を包括したカプセルに適用するにあたっては、カプセルが撹拌により生じる剪断力により壊れないことが重要である。この点に関して、撹拌培養時のカプセルが壊れない条件を見出すことができている。さらに、カプセルに封入された細胞が未分化を維持しつつ増殖できることが、特定の細胞を大量に一括して分化誘導するためには必要である。この点に関しても、ヒトiPS細胞を未分化状態で増殖させることを達成できている。さらに当初の予定において目標としていた新しいカプセル材料をつかったカプセルの作製にも成功しているため。
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今後の研究の推進方策 |
カプセル内で増殖したヒトiPS細胞の継代操作が可能であることを明らかにするためには、諸操作時の細胞の細胞のロスを少なくすることと同時に、初期に作製するカプセルの量を現状の10倍程度に増加させる必要がある。また、本年度は撹拌培養器によるiPS細胞の培養を実施するにあたって、毎日実施する必要のある培養液の交換時のコンタミネーションの防止に関する技術的な課題も解決する必要がある。これら各項目的には大きな課題ではないもののを1つ1つ積み上げることで、より優れたプロセスの開発につなげていく。また、ヒアルロン酸誘導体のようなiPS細胞と相互作用のできると期待される材料を使うことの有効性を実証していく。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究の進度により当初の予定ほどヒトiPSの培養に関わる検討を行うことができなかったため次年度使用額が生じた。 平成26年度は撹拌培養に用いるiPS細胞の培地が多くなること、当初経過になかった新たなiPS細胞株を使用した検討を行うことなどから、培養に関わる経費が増加することが予想されるため、これらに使用する。
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