研究概要 |
再生医療産業における品質管理に対する手法構築を目指し,本研究では,心疾患への臨床試験へ展開されている心筋再生パッチ(大腿筋筋芽細胞を用いた細胞シートを移植材とした)を対象に,工学的研究を展開する.平成24年度は,温度応答性培養皿を利用した細胞シート積層技術を板状の細胞集塊形成技術と見做し,集塊を構成する充填細胞(実質細胞と間質細胞),シート内で棲み分けされるターゲット細胞(血管内皮細胞など単細胞),刺激導入のための投与薬剤(培地成分,増殖因子など)からなる基本的な培養フォーマットを確立した.特に,移植材側と被移植部をそれぞれ,筋芽細胞シート培養容器とし,予め培養容器上に播種された血管内皮細胞の細胞挙動,特に,ネットワーク形成を観察し,集塊内では,充填細胞の流動が見られ,ターゲット細胞からみれば,いわゆる動的な足場とることが分った.従来の足場は静止場であり,本研究課題での集塊内での流動に伴う変化は,より生体に近い発生過程を模倣しうるものと考えられた.さらに,この基本培養フォーマットを,心筋パッチを対象とした治癒予測モデルの構築ならびにその汎用性を進めるため,立体的画像処理技術を駆使し,細胞シート内のネットワーク形成の定量的解析を行った.一方,上述の定量的解析を伴う内皮ネットワーク形成現象に対して,コンピュータ内での現象把握を目指した「シミュレータの構築」を行った.特に,細胞シート内での「棲み分けを考慮した血管内皮細胞ネットワーク形成シミュレータの構築」について,細胞挙動を表す種々のモジュールを構築し組み合わせることを試み,細胞流動および棲み分け機構まで表現できるものとなった.
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今後の研究の推進方策 |
研究推進において最も重要なことは,研究人員の確保であり,本研究においては,十分に確保できている.今後も,人員の確保を積極的に行ってゆきたい.
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