研究課題
基盤研究(B)
細胞中に含まれる遺伝子情報は、その多様性から発現数までさまざまである。さらに、個々の細胞活性によってその遺伝子発現も変化に富んでいる。細胞内で低コピーに存在する遺伝子情報(mRNA)の重要性は指摘されているが、確実に計測する方法に乏しかった。本研究では、単一細胞中に含まれる低コピーのDNA分子をデジタル精密計測する手法論を開発することを主な目的とし、それらの実証をHIVの感染過程の解明研究で行うこととした。ウイルスの潜伏は、個々の細胞活性が大きく影響することもあり、細胞ごとに計測することが望まれている。本手法を用いれば初期感染で導入されたウイルスの遺伝子情報や、感染後期過程における核から翻訳されたHIVmRNAも低コピーで計測が可能であり、感染プロセス解明に大きく寄与する。具体的には、本研究は、3年間の研究期間で10コピー以下の低コピーDNA分子をターゲットとしたデジタル精密計測技術を確立し、HIVウイルス感染初期過程におけるX4型、R5型ウイルスの存在量を細胞ごとに計測し、細胞活性との相関を得ることを目的としている。具体的には、DNA一分子計測システム(デジタルカウンティング)を確立し実証する。さらには、それらの原理を応用して、よりハイスループット性の高い、一機貫通プロセスシステムの完成を目指す。HIVの感染過程は、感染細胞の活性を受けることが示唆されており、本研究で確立する技術により単一細胞レベル計測することでHIV感染機構の解明につなげる。本年度は、竹山はDNA一分子計測システムの開発を行った。一つは、ターゲットDNA分子をキャピラリープレートチャンバーに一分子ずつ導入し、チャンバー内でPCR増幅後、ターゲット分子の可視化による分子カウントを行う手法、もう一つは、マイクロ流体工学技術を用いた核酸一分子計測を可能とするマイクロドロップを用いたデジタルカウント手法である。横田は、HIV感染機構の解明を行うためにT細胞株を用いてGFP発現レンチウイルスを作成し、細胞感染モデルを作製した。さらに、ターゲットウイルスの逆転写産物のRT-PCR定量系を最適化した。そして、竹山は、そのモデル系を用いたデジタルカウントシステムの検討を行った。
2: おおむね順調に進展している
それぞれの機関が、本研究で必要な要素技術の確立が順調に行われた。
25年度以降は、より低コピーの分子を細胞溶解駅から正確にデジタルカウントできるかを、細胞を調整する横田とデバイスを用いたデジタルカウント技術を開発した竹山とでより緊密に連携して研究を推進する。
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