ホールスラスタの大電力化に向けたクラスタシステム開発の関する知見を得ること目的に,2基のマグネチックレイヤ型ホールスラスタヘッドと1基のホローカソード中和器からなるSide by Side(SBS)システムを用いて,放電特性,推進性能の評価を実施した. まず放電特性について,20kHz帯域の放電電流振動振幅を単体作動時とSBS作動時で比較すると,放電電圧が低い場合にはSBS作動時に振幅は増大するが,高放電電圧時には振幅は同様か,僅かに減少することが示された.また,高放電電圧下ではSBS作動時の2基ヘッドの放電電流波形の位相は同位相を示すが,電圧を下げると明確な相関関係が見られなくなった.これらの結果はSBS作動時の放電電流振動はヘッド間干渉により影響を受けるが,放電電圧により特性が異なることを示している. 振り子式スラストスタンドを用いたSBS作動時の推力測定から推力は2基の磁場印加方向の組み合わせにより変化し,向きが逆方向となる場合に増加することが示された.この増加分は放電特性と同様に放電電圧に依存し,放電電圧の上昇に伴い減少していく,つまり2つの磁場印加方向の組み合わせに対して差が抑えられてくることが示された.また,放電電流値も磁場逆方向印加の場合に増加することから推進効率は逆方向印加の場合の推力増加から予測される値よりも上昇が低く抑えられる結果となった. これらの結果から,SBS作動時において2基のヘッド間干渉による作動安定性,推進性能への影響は明らかではあり,それらの影響は放電電圧等の作動条件に強く依存することが示された.
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