研究課題/領域番号 |
24360349
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
酒井 武治 名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (90323047)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | アブレーション / 計測センサー / 大気突入 / 空力加熱 / 航空宇宙流体力学 / 航空宇宙システム |
研究概要 |
[具体的内容]複合アブレーションセンサーの構成要素となる光学式炭化層表面損耗検知部と炭化式炭化層裏面進展検知部のそれぞれの作動を確立するため,個々のセンサー要素(以下ではそれぞれを光学式・炭化式センサーと呼ぶ)を制作した.作動特性を調査するため,光学式センサーを炭素断熱材に,炭化式センサーを軽量アブレータに艤装してアーク加熱気流で加熱試験した.光学式センサーでは,セラミック管内に光ファイバーを固定し,炭素断熱材の異なる深さ位置に管を配置して検知光強度の時間履歴を測定した.炭化式センサーでは,ポリイミド管を被せた炭素繊維強化プラスチック(以下CFRP)棒に,新たに選定したカーマロイ抵抗細線を螺旋に巻き可変抵抗回路を構成し,ローパスフィルタを介して出力した.また,これらセンサー要素の知見を基に,黒鉛棒側面に加工した溝に光ファイバーを埋め込んで光学式炭化層表面損耗検知部を,CFRP管を使って製作した可変抵抗回路で炭化式炭化層裏面進展検知部を構成して,複合センサーの原型を制作した.複合アブレーションセンサーは軽量アブレータに艤装してアーク加熱試験した. [意義・重要性] 光ファイバーで計測した検知光強度履歴から,最初上昇してある時刻でピークを迎え急激に下降する傾向を,3つの異なる深さ位置での結果で確認した.各ピーク値から求めた損耗時刻および損耗量は,ビデオによる可視化像および試験後供試体から得られたものと一致し,表面損耗の検知原理を示した.また,炭化式センサー試験では,昨年度と同様な通電特性が得られるともに,新たに使用した抵抗線の低い温度係数およびノイズ低減処理により,炭化進展距離検知性を向上させることができた.さらに,複合センサー試験により,放射光強度と炭化進展に相当する抵抗変化をアーク加熱試験中に初めて同時に計測した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
光学式センサーの作動原理を確立した点,炭化式センサー出力のノイズを低減し,温度係数の低い抵抗線で回路構成して基本回路特性を把握して,炭化式センサーの改良を行えた点,複合センサーのプロトタイプを製造し,各部の計測手法および出力を大型風洞加熱試験により確認できた点などを考慮し,おおむね順調であると評価した.
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今後の研究の推進方策 |
今年度開発した複合アブレーションセンサーでは,光学式炭化層表面損耗検知部には黒鉛棒を,炭化式炭化層裏面進展検知部にはCFRP管を使った.これらは,寸法性や加工性がよいこと,電気伝導性を有すること,市販ルートで安価に入手可能であることが利点であり.プロトタイプ製造上必須であった.ただし,軽量アブレータに艤装して試験するとアブレータほどには損耗せず,センサー先端部が材料から突き出て残った.このような傾向は実際の適用にあたって,局所的な高加熱や粘性衝撃層流れの乱流遷移を誘起する懸念材料となる. 本年度は,黒鉛やCFRPを使用せずセンサー各部を構成し,熱防御母材の炭化層と同等に熱劣化する機能をセンサーに付与することを目的としたさらなる改良を行う.表面損耗検知部に使う芯棒を,母材アブレータに使われる炭素基材と樹脂,それぞれに相当する粉末材を混練し,焼成処理して成形を行う製造工程の開発を行う.また,炭化進展検知部は,抵抗細線とポリイミド管のみを使って2層螺旋構造を有する可変抵抗回路を制作する.各部のセンサー要素の作動特性と複合形態の作動原理実証を並行して行い,センサーのアブレーション検知能力と熱劣化機能を両立させる.
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度繰越額分は愛知工業大学北川教授への分担金の未執行額であり、平成25年度は同教授を分担者から外したため今年度執行額として計上できなかったためである。 その他の使用額については、光学式センサーに使う芯材の高温劣化特性の調査のための風洞試験を次年度に延期して実施することにしたため、今年度は使用しなかった。 光学式センサーおよび炭化式センサーそれぞれの作動特性の改良に必要となる部材開発費と各センサーの作動特性試験を愛知工業大学で予定しておりその試験費用として使う予定である。加えて、それらを基にして構築した改良型複合センサーの作動特性試験をJAXAアーク風洞で行うことを予定しており、試験実施費用に使用する予定である。
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