研究課題/領域番号 |
24360352
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研究機関 | 岡山理科大学 |
研究代表者 |
桑木 賢也 岡山理科大学, 工学部, 教授 (80302917)
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研究分担者 |
衣笠 哲也 岡山理科大学, 工学部, 准教授 (20321474)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 宇宙利用・探査 / 紛体工学 / 混相流 / ロボティクス / 可視化 / テラメカニクス |
研究実績の概要 |
月や火星などの天体は非常に細かい砂礫で構成された表面を持つため、ローバーの効率的な移動のためにはローバーと砂礫との力学(テラメカニクス)が重要となる。本研究では粉体解析に用いられるPEPT(Positron Emission Particle Tracking)を導入することでこれまで不可能であった砂礫粒子の3次元運動の可視化を実現し、砂粒子の動きと車輪に働く力の関係を明らかにすることで、惑星探査ローバーの車輪や履帯と砂礫地盤との相互作用の三次元的かつ動的な解析手法の確立を目指している。 本年度はまず、前年度得られたPEPTによる粒子軌跡データを車輪から見た相対座標系に変換した。その上で車輪下の砂粒子の速度場を求め、車輪に働くせん断応力場を求めることを試みた。しかし、せん断応力場を求めるのに十分な速度場が得られていない箇所があることが判明した。また、車輪近くの速度場は特に精度が要求されるため、その点に関しても検討を行った結果、再度、PEPT実験を行う必要があることが判明したため、惑星探査ローバーホイールテストヘッド装置をイギリス・バーミンガム大学に搬送し、3月に半月かけて、集中的に実験を行った。また合わせてトレーサー粒子にアルミナを用いている影響に関しても実験による検討を行い、砂粒子と異なる運動は観察されなかったため、トレーサー粒子としては妥当であることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
PEPTによる実験データから車輪下の砂粒子の速度場を求め、解析を行った。その結果、実験で不足していたデータが判明したため、3月に再度PEPTによる実験を行った。車輪にかかるせん断応力場を求めるのに十分な粒子軌跡を求めることができたため、研究全般としては順調に進んでいると判断している。実験、解析と並行して適宜学会発表を行っており、また、論文投稿も行っており、順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
3月にデータ不足部分の再実験を行ったため、砂粒子の速度場から車輪にかかるせん断応力場を求めるための粒子軌跡データは得られたと思われる。そこで、再度、車輪下の粒子の速度場を求め、それから車輪にかかるせん断応力場を求める。その上で、力覚センサーから得られた車輪にかかる力と比較し、まず砂粒子の速度場からせん断応力場を求める手法の妥当性を検討する。妥当性が確認できれば、砂粒子の速度場と車輪にかかる力の関係を検討していく。速度場を得るため、2種類の条件に関して詳細にデータを取っている。このうちの一つは舵角がある場合の3次元的な動きをする場合である。これまで3次元的な砂粒子の可視化がされたことがないため、砂粒子と車輪にかかる力の関係性も明らかにはなっていないため、本解析で得られる結果は画期的なものになると期待できる。 PEPTによる砂粒子の可視化結果はすでに論文投稿しており、まもなく受理される見通しである。上記の砂粒子の速度場から得られるせん断応力場と車輪にかかる力の関係性に関しても早急に論文化できるよう準備をしたいと考えている。また、研究最終年度であるため、全体のまとめを行っていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
3月2日から13日までイギリス・バーミンガム大学にてPEPT実験を行ったため、施設使用料が発生した。年度末であったため、支払い請求が3月末あるいは4月になってくる可能性があったため、基金助成金を繰り越し、次年度に支払い予定の必要があったため。
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次年度使用額の使用計画 |
3月2日から13日までイギリス・バーミンガム大学にてPEPT実験を行った際の施設使用料に使用予定。
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