研究課題/領域番号 |
24360372
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
佐々木 久郎 九州大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (60178639)
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研究分担者 |
菅井 裕一 九州大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (70333862)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 廃棄物地下保存・処分 / 二酸化炭素 / 地中貯留 / CCS / 漏洩モニタリング / フィールドテスト |
研究概要 |
平成25年度の研究では,土壌表面からのCO2ガス放散フラックスの測定装置を新たに作製し,九州大学キャンパス内でのフィールド測定を実施したほか,CO2に対して水素が1%混入した場合における岩石の吸着性および土壌中のガス拡散係数の相違についての室内実験を実施した。試験フィールドにおける放散ガスフラックスの測定装置の妥当性を検証するため,人工的に調整したCO2フラックスを容器底部から放散させ,土壌表面において測定したCO2フラックスとの比較から精度検証実験を実施した結果,概ねガスフラックスの測定誤差が約10%以内であることを確認した。九州大学伊都キャンパス内共同利用スペースにおいて土壌CO2の放散フラックスのバックグラウンド測定を行った。測定サイトにおいて地表面から放散されるCO2フラックスを実際に測定した。具体的には,開放部分と地表面が接するように設置されたチャンバー内のCO2濃度変化を測定し,その結果からCO2フラックスを求めた。また,測定したCO2放散フラックスと地表面から深さ2cm程度の地点の土壌温度,土壌水分量,大気温,地表風速などとの関連性を調べた結果,土壌温度と土壌水分によって影響を受けるものの強い一意の関係は見いだせなかった。ただし,20℃のCO2放散フラックスが概ね2 μmol/s/m2 であり,温度上昇に伴いフラックスも上昇する傾向が明らかになった。これらの測定値は,カナダにおいて測定された測定結果とほぼ同様のレンジにあり,土壌中における微生物活動が温度の上昇とともに活発化するためと判断される。また,H2ガスが微量に含まれている場合を想定するとき,H2ガスがCO2ガスに先行して地下貯留層から地表に漏出することを室内実験によって明らかにした。さらに,STARSを用いて数値モデルを構築し,実験結果とのヒストリーマッチングを実施した結果,H2ガスがCO2ガスに先行して移流・拡散することを数値シミュレーションによって確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
CO2分離・回収地中貯留(CCS)によって地下に貯留されたCO2の地表への漏洩の検出のためには,地表面から大気に放散される土壌CO2フラックスの把握および貯留されるCO2に含まれるH2などの微量の不純物ガスの拡散挙動の把握が基盤データとして必要とされており,本年度の研究成果としてある程度それらの課題を明らかにすることができた。とくに,CCSに関連する地表面でのCO2放散フラックスの挙動モニタリングを行うためには,CCS実施前のCO2フラックスのバックグラウンド値を正確に測定する機器および測定法の開発が必要とされていた。本年度の研究成果として,ガスモニター装置の特許の出願を行ったことからも,本研究がほぼ順調に進展していると判断される。
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今後の研究の推進方策 |
カナダ・サスカチュワン州での大規模CCSプロジェクト(バンダリーダムCCSプロジェクト)の貯留実施フィールドにおける土壌CO2フラックスのバックグランドデータの収録を平成25年度9月から開始している。最終年度の平成26年度においては,九州大学の試験フィールドにおいて実施した漏えいCO2ガスの検出方法および自然界の土壌CO2フラックスに関する研究成果を生かして,実際のCCSプロジェクト推進地域に対してCO2放散フラックスに基づいたCO2漏えい警報システムを提示し,3年間の研究成果のまとめを行う予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
テクニカルスタッフの人件費(平成25年3月分を含む)に関して余裕を持たせたため、繰越額が生じた。 繰越額をテクニカルスタッフの人件費に組入れて平成26年度計画を策定し、3年間の研究実施計画を完了させる。
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