研究実績の概要 |
CO2を大規模排出源から分離回収し,それを深層の帯水層や石油貯留層などに地中貯留するCCSシステムにおいて,地表への漏えいに関わるモニタリングと警報システムは周辺住民の安心・安全を保障する上で極めて重要である。ただし,地表近傍においては土壌から大気へ常時CO2が放散され,その量は産業活動などによる全CO2排出量の9倍にも及ぶと予想されている。すなわち,地表近傍の自然条件でのCO2放散挙動を理解したうえで,地中に貯留されたCO2の漏えいを判断することが必要とされている。 本研究課題の平成26年度のフィールド試験研究では,九州大学伊都キャンパス内共同利用スペースにおいて深度100m坑井の周辺に30,50,100, 200, 300, 500cmのケーシング孔を設置し,各深度における浅層土壌のCO2濃度分布を測定し,地表でのCO2ガスフラックスとの対応性を調べた。また,地表面から放散されるCO2フラックスを実際に測定した結果,測定した地表からのCO2放散フラックスと地表面から深さ2cm程度の地点の土壌温度,土壌水分量,大気温,地表風速などとの関連性を調べた結果,土壌温度と土壌水分によって影響を受けるものの,土壌ガス濃度との強い相関性を見出すことはできなかった。また,岩石,水および原油などへのCO2吸着および溶解挙動の測定を実施し,地下貯留層から地表へのCO2漏えいに関する数値予測シミュレーションを実施した。 さらに,CCSの統合的なシステムにおける不確定性がCO2圧入特性に及ぼす影響について感度分析に関わる数値シミュレーションを実施し,大気中からCO2を分離回収し,その近傍においてCCSを実施する「Air Capture」と呼ばれているシステムに関する評価研究を行い,3年間の研究成果のとりまとめをを実施した。
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