研究課題/領域番号 |
24360379
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
飯尾 俊二 東京工業大学, 原子炉工学研究所, 准教授 (90272723)
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研究分担者 |
筒井 広明 東京工業大学, 原子炉工学研究所, 准教授 (20227440)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 磁場閉じ込め / ヘリカル磁場 / 位置安定性 / トカマク / 核融合炉 / 摂動磁場コイル |
研究概要 |
サドルコイルの組み合わせで、垂直位置安定化に必要な磁場を生成できるのか検討した。垂直位置不安定性の原因は、軸対称コイルにより生成された水平磁場である。ヘリカル磁場により水平磁場を打ち消すことができれば、垂直位置安定化が実現される。真空磁場の磁力線計算を行い、トロイダル磁場コイルとサドルコイルを組み合わせて作られる磁力線の軌跡を調べた。大きなサドルコイル電流が必要であるものの、磁力線の軌跡は平均的な水平磁場をもたらす事を確認できた。コイル配置や通電パターンを変更すれば、さらに水平磁場は大きくできると考えられる。 製作中のトロイダル磁場コイルに働く電磁力はコイル1つにつき500kgf程度と非常に大きい。支持構造の設計のため、有限要素法解析による応力解析を行った。設計では、小型装置特有のパルス的な通電による撃力に耐えるため、安全率を8程度とした。巻線・支持構造一式を試作して、強度試験を行った。試験では電磁力を模擬するために、想定される電磁力の2倍である1000 kgfのおもりをコイルに吊り下げた。これにより、静荷重においては十分な安全性が確認された。同時にひずみゲージによる応力測定も行い、変形は安全な弾性領域にあると確認した。強度試験の結果に基づき、トカマクに用いるコイル16式の巻き線を製作した。 CS・PFコイル系については、フライホイール付きの誘導発電機を整備した。小型装置の電源にはコンデンサバンクが広く使用されているが、コイル電流の供給とともに電圧が大きく低下してしまうので制御性に難がある。誘導発電機では、電源電圧が長時間維持できるのに加えて、蓄積エネルギー密度が大きいのでコンパクトな電源を実現できる。IGBTを用いたDCチョッパーと組み合わせ、電圧変動を加味して補償するようにPWM制御すると、発電機電圧が半減しても、指令した方形波電流を1秒程度維持できることを実証した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
製作中のトロイダル磁場コイルの健全性を確保するために、支持構造の有限要素法による応力解析を行い、巻線・支持構造一式を試作して強度試験を実施するステップを踏んだため、装置の完成と実験開始が平成26年度にずれ込んだ。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年夏までに計測器も含めて装置組み立てを完了して、通電試験、真空引き、ベーキング、放電洗浄を経て、放電調整に入る。フィードバック制御の調整を行い、制御を停止すれば垂直位置不安定性が起きる高楕円度のプラズマを生成する。 垂直位置不安定性が起きる高い楕円度のプラズマについて、ヘリカル磁場のプラズマ位置安定化効果を調べる。通常、縦長断面プラズマはポロイダル磁場コイルを使ってプラズマ位置をフィードバック制御しなければ維持できない。このような縦長断面プラズマに放電途中からヘリカル磁場を加える。ポロイダル磁場コイルのフィードバックを中断してもプラズマが動かなければ、提案コイルが自律的にプラズマ位置を制御することを実証できる。実験データと数値解析の結果と比較しながら、位置安定性に対するコイル形状の最適化を行う。ヘリカルコイルは簡単に巻き直せるよう手巻きで設置する。併行して、数値解析によりヘリカル装置でのプラズマ位置安定性を調べるとともに、ヘリカル装置のプラズマ位置安定化効果をさらに高める可能性を探る。 ディスラプション実験を行い、VDEを抑制できるか調べる。通常の放電中と異なる点は、プラズマの電流減衰に伴い流れる真空容器中の渦電流の影響である。VDEを抑制出来れば、プラズマの消滅中に外部加熱を継続し、プラズマの状態を復旧出来るか調べる。この時、熱消滅に合わせて加熱するのではなく、消滅前から定常の電子サイクロトロン加熱を行う。また実験結果を比較しながら、位置安定性に対するコイル形状の最適化を行う。そしてまとめを行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
装置の完成が平成26年度にずれ込み、最終組み立てに必要なトロイダル磁場コイル支持構造と磁気計測器支持構造については、最終設計に基づいて平成26年度に調達するのが得策であるため。 トロイダル磁場コイル支持構造に60万円、磁気計測器支持構造に55万円充て、残りは消耗品に使用する予定である。
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