研究課題
トーラス型磁場閉じ込めプラズマに対し、収束した超音速ガス流を入射することで、プラズマを対向部(ダイバータ)から切り離すデタッチメント(非接触化)の物理機構を解明し、新手法として確立することが本研究の目的である。超音速ガス流による局所的密度変動を検証するため、電離過程を高速カメラで二次元分光計測し、局所的な密度及び温度分布の変化を高時間分解で求める。平成24年の研究では、超音速ガス流が想定よりも広がっていることが明らかとなった。局所的な密度増大によるプラズマ周辺部冷却という本研究の目的を達成するため、平成25年度は超音速ガス流を発生するラバールノズルの全長を0.4 mから2.4 mに長尺化し、ノズルのガス出口をよりプラズマに近づけた。この超特大ラバールノズルは、ノズルスロート直径0.2 mmに対し、出口直径が88 mmとなっており、膨張比(= 出口部断面積 / スロート部断面積)が20万倍と非常に大きいのが特徴である。ヘリウムを用いた超音速ガス入射実験を行い、ガスがプラズマと接触・電離される過程を高速カメラで計測したところ、超特大ラバールノズルから十分に収束したガス流が噴出されていることを示す結果を得た。更に本研究費で整備した5分岐イメージングファイバーを用いて、同一視野の画像を特定の波長でフィルタリングし、それぞれの比を取る事で局所的な密度・温度計測を行うヘリウムビームプローブ計測を試みた。その結果、これまで一様と考えられてきたプラズマ周辺部の密度・温度分布に、磁力線の疎密を反映していると考えられる複雑な構造があることがわかった。超特大ラバールノズルからの超音速ガス入射により、ダイバータの熱流束分布にトロイダル/ポロイダル非対称性が現れることも明らかとなった。これは本研究の目的と直接関係する重要な結果であり、今後とも詳細に調べる必要がある。
2: おおむね順調に進展している
当初計画通りに超音速ガス入射装置の設置位置変更とイメージングファイバー等計測系の整備を完了した。ガス流が当初の想定よりも広がっていたため、その対策が必要となったが、超音速ガスを発生するラバールノズルを大型化することでこの問題を解決し、実際にガス流が収束していることを示す実験結果を得た。線強度比法による温度・密度計測を行い、これらの2次元分布を求めることもできている。本研究の主目的の一つである局所的密度増大による周辺部プラズマ冷却についても、これが可能なことを示唆する初期的な実験結果を得ており、今後これを補完する実験を行う事で本研究の目的を完遂できる見通しである。
本研究の目的である局所的密度増大による周辺部プラズマ冷却によるデタッチメント制御手法を確立するため、引き続きプラズマ実験を行う。水素の線強度比法による局所的温度・密度分布の2次元高速計測を行い、デタッチメントに到るまでの周辺部温度・密度分布の推移を明らかにする。これまでの実験結果を論文にまとめ、投稿する。
支払いが次年度になったため。次年度使用額は2円であり、翌年度分として請求した研究費と合わせて使用する。
すべて 2014 2013
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (4件)
Nuclear Fusion
巻: 54 ページ: 043010-1-9
10.1088/0029-5515/54/4/043010
プラズマ・核融合学会誌
巻: 89 ページ: 366-373
巻: 54 ページ: 013004-1-10
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