研究課題/領域番号 |
24360385
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研究機関 | 核融合科学研究所 |
研究代表者 |
田中 謙治 核融合科学研究所, ヘリカル研究部, 准教授 (50260047)
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研究分担者 |
西浦 正樹 東京大学, 新領域創成科学研究科, 准教授 (60360616)
久保 伸 核融合科学研究所, ヘリカル研究部, 教授 (80170025)
下妻 隆 核融合科学研究所, ヘリカル研究部, 教授 (80270487)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 協同トムソン散乱 / 高速イオン / プラズマ / 大型ヘリカル装置 / マイクロ波 |
研究実績の概要 |
本研究は高出力マイクロ波光源(マイクロ波ジャイラトロン)を用いた協同トムソン散乱計測による高速イオンの速度分布関数の計測である。高速イオンの計測を行うシステムの開発のためにマクスウェル分布に緩和し、熱化したバルクイオン成分も計測対象にしている。熱化したイオンの速度分布関数は空間等方性を持つが、熱化していない高速イオンの速度分布関数は空間的に異方性を持つため、異なる空間方向から空間方向から複数の視線で計測することにより詳細な計測を目指す。 平成26年度は第2視線のシステムの開発を行った。第2視線は平成25年度と異なる視線を用いることにより平成25年度までの計測速度成分と異なる速度成分のデータを取得することを目指した。平成25年度までは77GHzのマイクロ波を用いて垂直方向から入射して後方散乱光を計測していたがこの場合、共鳴面に接するように入射するため、入射ビームがプラズマの電子密度勾配の僅かな違いにより共鳴面を通過する場合と通過しない場合があり、その条件により迷光が大きく変わり計測に支障をきたしていた。そこで、横断面から入射することにより常に入射方向前面に共鳴面がある設定とし共鳴面で入射マイクロ波が吸収されるようにして迷光を抑えることができるようにした。計測信号は高速デジタイザーを用いて詳細な協同散乱スペクトルを計測した。磁場と垂直方向の波数を計測することによりイオンバーシュタイン波を計測し、イオンバーシュタイン波特有の離散的なピークを持つスペクトルを計測した。この離散スペクトルはプラズマのイオンの密度比の関数になっており、大型ヘリカル装置において水素イオン、ヘリウムイオンの密度比計測の初期データを取得した。また、77GHzでは屈折の効果が大きく計測位置を正確に決定できないため、154GHzのシステムの開発を行い高い密度まで安定して計測できるシステムの開発に着手した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
異なる視線により異なる速度成分し高速イオンの速度分布関数の詳細計測を行うことが本課題の目的である。ただし、物理計測を行うために計測精度を向上させる必要があり迷光の低減、および、計測位置の正確な評価をすることが必要であることが開発の過程で明らかになった。横入射することにより、迷光の低減、計測位置の決定には改善があったがまだ定量的なバルクイオン、高速イオンの温度、密度を評価するにはいたっていない。また、当初予定していた77GHzでは屈折の効果が大きく、密度が2x10^19n-3以上になると計測位置の確定が困難であることが明らかになった。そのため屈折の効果が小さい154GHzのマイクロ波を用いることにした。ただし、154GHzのマイクロ波を用いた実験データはマイクロ波コンポーネントの納品が送れたため平成26年度の実験では協同トムソン散乱計測は実施できなかった。ただし、マイクロ波を入射しない状態で電子サイクロトロン放射光を計測し154GHzのシステムが問題なく稼動していることを確認した。入射アンテナの制限により異なる視線で同時計測はできないがショットごとにアンテナの入射方向、受信方向を帰ることにより異なる高速イオンの成分を計測できるシステムは完成しつつある。 また、新しい展開としてイオンバーシュタイン波の分散関係を計測することにより当初予定していなかった異なるイオン密度比を計測できるシステムの開発も進展した。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度は本課題のまとめの年度であり、本来は平成26年度までに取得した計測結果の解析と会議発表、論文投稿のみを行う予定であった。しかし、154GHzのシステムでのデータが取得できていないため、今まで取得したデータの解析に加えて引き続き平成27年度も大型ヘリカル装置での実験を行う。平成25年度までは磁力線に垂直方向に入射した中性粒子加熱ビームの高速イオンの速度成分しか計測できなかったが平成26年度に設置した新しい水平入射のシステムでは磁力線に沿った方向に入射した高速イオンの成分が計測可能である。その結果、磁力線方向に入射した中性粒子ビームと磁力線と反対方向に入射した中性粒子ビームで高速イオンのスペクトルを比較することが可能となった。このように磁力線に沿った方向の中性粒子ビームの入射方向を変えると高速イオンの速度分布関数のの非対称性が逆転することが予測されており、今後の実験で確認することを目標にしている。。新しい154GHzの計測システムはほぼ完成しているので異なる速度成分を持つ高速イオンを計測できる可能性が高い。 会議発表はレーザー応用計測に関する国際シンポジウムで報告するとともに今までの計測の開発について査読つきの論文化を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成26年度において154GHzのシステムを用いた実験を計画していたが主要なマイクロ波コンポーネントである、ノッチフィルターの納品が遅れて計測ができなかった。そのため154GHzのシステム用に用意していた支出が当初の予定より低くなった。
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次年度使用額の使用計画 |
当初アメリカ物理学会での本課題の報告を考えていたが、平成27年度9月に北海道大学においてレーザー応用プラズマ計測に関する国際シンポジウムが開催されることになり、同シンポジウムでも本課題の報告を行うとともに現地プログラム委員、国際プログラム委員として会議の運営に当たることになり、繰越分はその旅費として使用する予定である。
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