[目的]本基盤研究では、簡便な磁気プローブや電子サイクロトロン放射測定器を用いて高速粒子駆動MHD 不安定性の周波数や簡便な空間構造情報を得て、モデルMHD平衡をもとに計算したアルヴェン固有モードの固有周波数や固有モード関数が観測量と矛盾無く一致するように閉じ込め磁場構造を規定する回転変換(あるいは安全係数 q)分布を推測する手法(ここではMHDスペクトロスコピーと呼ぶ)の開発を目的とする。この手法はプラズマ計測機器の設置が高放射線環境下で制約をうける核融合炉で特に有効である。 [研究実績]本MHD スペクトロスコピー法の適応性を、核融合科学研究所の大型ヘリカル装置(LHD)及び韓国核融合研究所のKSTARトカマク装置の中性粒子入射加熱プラズマを用いて調べた。LHDやKSTARでは高速イオン駆動モードの空間構造測定法が限られているため、モード周波数の絶対値と同周波数の時間変化のみを用いて回転変換(あるいはq)分布の推定を試みた。このような条件下では、モード周波数が回転変換分布に強く依存する反転磁気シア・アルヴェン固有モード(RSAE)や大域的アルヴェン固有モード(GAE)を用いたMHDスペクトロスコピーが有効である。LHDではRSAEに加えGAEを利用したMHDスペクトロスコピーを試みた。アイスペレット入射により生成した高ベータプラズマではベータ値上昇に応じて周波数掃引されるGAEが観測され、その周波数の時間発展から反転磁気シア配位が実現されていることが明らかとなった。さらに回転変換分布の時間発展がほぼユニークに推定できた。また、KSTARにおいてトカマクで初めて鋸歯状振動が発生するプラズマで高速イオン駆動GAEを観測し、そのモード周波数の時間掃引からプラズマ中心の安全係数q(0)の時間発展が精度良く推定できた。
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