研究実績の概要 |
本研究は、熱応答性イオン液体(IL)を用いたウラン汚染物の処理法を開発するための基盤データの取得を目的としているが、本最終年度として、前年度熱応答性イオン液体[Hbet][Tf2N](Hbet: 1-carboxy-N,N,N-trimethylmethanaminium hydroxide, Tf2N: bis(trifluoromethylsulfonyl)imide)の6価ウラニウムイオンに対するベタイン(Hbet)の錯形成により、高い抽出率を示したことから、詳細な研究例があるイオン液体として [BMI][NfO](BMI: 1-butyl-3-methyl-imidazolium, NfO: nonafluorobutanesulfonate)を使った抽出挙動についてウラニルイオン分離の基礎的試験を行った。[Hbet][Tf2N]と同様に、硝酸-[BMl][NfO]系において、高硝酸濃度域ではウラニルイオンは全く抽出されないが、低硝酸濃度域では、比較的高い抽出能を有することを明らかにした。ウラニルイオンの分配比が水相の硝酸濃度の増加とともに減少する傾向を示す抽出挙動に対する詳細な検討を行った結果、水素イオンと硝酸イオンの両方が抽出に関与していることが示唆された。また、ウラニルイオン抽出挙動の[NfO]陰イオン濃度依存性、紫外可視吸収スぺクトル測定および水相側の[BMl]陽イオンの定量において得られた結果より、高硝酸濃度域の場合、ウラニル硝酸錯イオンの生成により抽出が阻害され、低硝酸濃度域ではウラニルイオンと[NfO]陰イオンとのイオン対抽出が進行し、イオン液体相ではウラニルイオンに対し4固のNFO陰イオンがイオン対を生成することが示された。ベタインのイオン液体の場合も同様なイオン対生成機構で抽出が行われていると示唆された。
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