研究課題/領域番号 |
24360392
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
山澤 弘実 名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (70345916)
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研究分担者 |
森泉 純 名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (90303677)
平尾 茂一 名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (30596060)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 湿性沈着 / ラドン壊変生成物 / 放射性核種濃度 / 空間線量率 |
研究概要 |
降雨・降雪中ラドン壊変生成核種の濃度測定については、夏期観測のための冷却機構導入等の機器の改良を加えて測定を継続し、本年度冬期から3月末までに降雪を含む全25事例の測定結果が得られ、その中で降水継続時間が1時間以上で濃度の誤差も小さい解析に適するものは12事例であった。この中で降雪中に特に高い濃度が得られた事例があり、これを含めて次年度の沈着モデルを用いた解析の対象とする。 沈着過程のモデル化では、過去の降水中ラドン壊変核種濃度測定値を対象として雲中取り込みに関する0次元モデル(空間分布を考慮しない概念モデル)を作成して、洗浄に関する速度係数の降水強度依存性を明らかにした。その結果を用いると、測定で見られる降水中濃度の複雑な時間変化は、この係数の降水強度依存性と雲水中インベントリの時間変化の両者により決定されている可能性が高いことを指摘した。これと平行して、3次元計算用の湿性沈着過程のモデルのプロトタイプを作成し、大気輸送モデルに組み込んだ。福島原発事故を対象とした試計算では、沈着量分布が概ね再現できるものの、細部についてはまだ再現性が不十分であることが示された。 線量率変動データのモニタリングからの核種濃度推定法の開発では、検出器周りの遮蔽物の幾何学的分布の考慮により、ラドン壊変核種の濃度を合理的に推定できる事を明らかにした。推定値に対して、土壌面での浸透及びモニタリング建屋屋根からの流出が及ぼす影響を明らかにし、降下量がほぼ等しいと考えられる近接する複数地点のデータから、これらの特性を推定できる可能性を指摘した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
年度前半では冷却機構の追加等の降水中濃度測定機器の改良を進めたが、期間中盤で水分の侵入によると考えられる検出器損傷が生じ、対応に時間を要した上に応急対応により測定を行っている。降雨・降雪中のラドン壊変核種濃度測定では特に降雪中データの取得数がまだ想定より少ないものの、解析の対象とできる良好なデータが取得されつつある。 沈着過程のモデル化では、洗浄係数の降水強度依存性について想定以上の興味深い結果が得られたという想定以上の部分もあるが、その反面3次元モデルへの反映がまだできていない部分もあり、全体としてはほぼ想定通りの進捗である。 濃度推定法の開発では、現地調査に基づく遮蔽物の幾何学的分布を考慮することにより濃度の合理的推定が可能であるという結果は想定通りの達成度である。一方、線量率変化あるいは波高分布の特徴から現地調査なしに濃度推定を行う方法の検討という計画以上の進展を目論んでいたものの、その可能性が示されたが、方法としての課題がまだ残されている。
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今後の研究の推進方策 |
降水中濃度測定器検出器部分の本格的修理を行い、バックグランド放射線の影響の少ないより精度の高い濃度測定値の取得を継続する。昨年度の冷却機構の導入により、夏期の測定は良好に行うことが可能と考えられる。本年度は特に冬期の降雪データ取得に力点を置く。 沈着過程のモデル化については、0次元モデルによる解析結果を3次元モデルに反映し、主に大陸からの長距離輸送ラドンからの壊変生成物沈着について3次元モデルによる再現計算を行い、沈着過程モデルの検証を行う。また、他プロジェクトと共通する事項であるが、福島原発事故への沈着モデルの適用を行い、その再現性を検証する。 3次元モデルによる沈着計算と実測の比較 濃度推定法については、主に大気中濃度の推定可能性と、地面上濃度及び大気中濃度推定の誤差要因の検討を行う。近隣樹木への沈着が濃度推定の最大の誤差要因となることから、その大きさの評価が可能か、あるいは現地調査なしにスクリーニングできるかを検討する。また、表面流出及び浸透について引き続き検討し、散乱γ線成分に対する影響を評価し、その影響を強く受ける大気中濃度推定値の精度の向上を目指す。
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次年度の研究費の使用計画 |
1-3月期の降水中濃度測定器維持のための消耗品を購入予定であったが、故障に伴う停止期間が生じ、年度内での調達の必要が無くなったため。 本年度停止期間を補うための測定を来年度実施し、そのための消耗品代として使用する。
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