研究課題/領域番号 |
24360393
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
佐々木 隆之 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (60314291)
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研究分担者 |
小林 大志 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (80630269)
森山 裕丈 京都大学, 原子炉実験所, 教授 (90127150)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 放射性廃棄物 / 溶解度 / コロイド / アクチニド / 有機物 / ゼータ電位 |
研究実績の概要 |
高レベル放射性廃棄物処分の核種移行評価では、pH、イオン強度、温度等様々な地下水条件下での4価アクチニドの見かけの溶解度を表す熱力学モデルを構築する必要がある。昨年度は見かけの溶解度に含まれる単核加水分解種および溶解度制限固相に着目し、加水分解定数や溶解度積など熱力学データの温度依存性について検討し、本年度は見かけの溶解度へのコロイド種の寄与の温度影響を明らかにするため、4価アクチニドのアナログである4価ジルコニウムの見かけの溶解度、コロイド種の粒径分布およびゼータ電位を25℃~60℃で測定し、溶液条件がコロイド種の凝集現象に及ぼす影響について熱力学的な解釈を試みた。25℃の場合、溶解度はpH2付近からpHの増加とともに低下し、pH4以上では定量限界である1e-8M付近の値を示した。また、上澄に含まれるコロイド種の粒径分布の中心位置が、pH増加に伴い大粒径側へとシフトしたことから、コロイド種の粒径が増大することが分かった。一方、ゼータ電位はpHの増加とともに+40mVから-5mVまで低下したことから、コロイド表面の電荷の絶対値が低下し、コロイド同士の静電的な反発が小さくなることでその成長が促されると解釈された。一方、40℃および60℃では、温度上昇に伴いコロイド種の粒径が増大、ゼータ電位が低下することで見かけの溶解度が低下した。既報のZr単核加水分解定数の温度依存性からは、同pH下で温度が高いほど高次の加水分解種の存在割合が増すことから、コロイド粒子表面の電荷の変化と凝集反応の促進による溶解度低下との関連が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
4価金属水酸化物の見かけの溶解度と、生じたコロイドの化学状態との関連について、温度およびpH依存性の観点から、系統的実験により考察できることを確認した。特にコロイドの凝集安定性を評価する上で、コロイド粒子の表面電荷が重要なパラメータであり、これを加水分解定数等を用いて熱力学モデルにより解釈できる見通しを得たことは特筆すべき成果である。一方、プルトニウム実験は近年のロシアにおける政策上の理由から実験を進めることができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度は4価金属水酸化物コロイドの安定性解釈の指標として、コロイド凝集状態を解釈するための熱力学モデルを提案する。特に試料の静置温度がコロイドの凝集挙動に与える影響が大きいことから、これらの実験を系統的に行う必要がある。プルトニウム実験はロシア側研究所との調整を進め、これまでの成果に関連した情報交換を行うと共に、実験の可能性について模索する。
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次年度使用額が生じた理由 |
低炭酸環境を維持するための既存設備の不具合・調整に伴い生じた、コロイド安定性実験の開始時期の延期に伴う一連の遅延が原因である。
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次年度使用額の使用計画 |
上記理由による遅延は、国内実験の効率化(並列実験の遂行)およびデータ処理・解析を迅速に行うことで、解消できる計画となっている。特に昨年度の成果に基づき、次年度当初に追加実験を行うこととし、これに向けた実験環境の迅速な整備を伴う計画となっており、繰り越しを含む全体の予算執行に問題はない。
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