4価アクチニドであるトリウムを用いた実験を行った。4価トリウムのアモルファス水酸化物を予め調製し、pHおよびイオン強度を調整した試料溶液に固相として添加した。試料溶液は、25℃、40℃および60℃の恒温器内において所定の期間、振とうした後、10℃~60℃において溶解度を測定した。コロイド種が見かけの溶解度に及ぼす寄与を調べるため、異なる孔径のフィルターを用いた限外ろ過を行い、溶存種の粒径分布を調べた。25℃、40℃および60℃で熟成した後、25℃で測定したTh水酸化物の溶解度は、熟成温度が高いほどわずかに低い値をとることが分かった。X線回折による固相分析の結果、40℃および60℃で熟成した固相では、結晶酸化物(ThO2(cr))に相当するピークが見られ、初期のアモルファス水酸化物固相の結晶化が進行したことが示された。また、このとき得られたピークを解析することにより、固相の粒子サイズを求め、溶解度の低下を固相粒子サイズの変化と関連付けて説明した。さらに、各温度で熟成した試料溶液の溶解度を10℃~60℃までの異なる温度で測定することにより、溶解反応のエンタルピーやエントロピーを求め、アモルファス水酸化物固相の状態変化を伴うような溶解度に対して熱力学的解釈が適用できる可能性を示した。
|