研究課題/領域番号 |
24360394
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
神野 郁夫 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (50234167)
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研究分担者 |
飯田 秀博 独立行政法人国立循環器病研究センター, その他部局等, その他 (30322720)
渡辺 賢一 名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (30324461)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | X線 / コンピュータ断層撮影 / エネルギー分解 / 多変量解析 / 低被曝 |
研究実績の概要 |
申請者が開発したtransXend検出器の電流出力を多変量解析に利用し,1.アクリル(軟組織模擬体),ヨウ素(造影剤模擬体)及びアルミニウム(骨模擬体)を識別すること,および2.肝臓中の鉄分測定を模擬した測定を行うこと,を目的とした. 1. transXend検出器の要素検出器で得られた電流値Ii(i=1,6)を用い,I2/I1-I3/I2の2次元グラフからアクリル-ヨウ素厚さ分布,I3/I1-I5/I3の2次元グラフからアクリル-アルミニウム厚さ分布が得られることを示した.また測定電流値をアンフォールディングし,設定エネルギー範囲のX線数の比を用いても,同様の厚さ分布を得られることを実証した.この結果を用いて,被検体を1方向から透過撮影することで,ヨウ素造影剤で修飾された癌組織の有無が判明し,2方向から透過撮影することで,癌組織の位置,形状を画像化できる.今後,透過撮影の回数と画質依存性を研究することで,画期的に低被曝量の診断用コンピュータ断層撮影(CT)法とできる. 2. 肝臓中の鉄分が多いと肝臓癌など肝疾患の原因となる.肝臓には脂肪があるため,従来のCTでは正確な鉄濃度の測定ができない.そこでtransXend検出器を用いたエネルギー分解CT測定を行った.設定した2つのエネルギー範囲の線減弱係数をx軸,y軸にとることで,軟組織,脂肪,鉄それぞれが100%の点で構成する3角形ができる.これらの混合物をCT測定することにより,3つの物質が分解できることを示した. これらはそれぞれ査読付き論文として発表した.さらに,高いエネルギーにK吸収端を持つ金造影剤を用いることで,従来のヨウ素造影剤を用いた場合の1/10の被曝量でCT測定ができることを示した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予めの目的は達成できている.さらに,金造影剤をエネルギー分解CTで測定することで,ヨウ素造影剤によるCT測定の1/10の被曝量でCT測定が可能であることを示した.また,フラットパネル検出器など,一般的な平面検出器を用いてtransXend検出器とする手法を考案した.これは現在,企業から特許申請を行う準備中である.また,京都大学病院の人体用CT装置を用いた実験も行っている.
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今後の研究の推進方策 |
transXend検出器を用いたエネルギー分解CTを第三世代CTに対応させる.多数の検出器を2次元に配置し,それをX線進行方向に並べる手法では,読出し回路の数が膨大となり,実用的ではない.そこで,25年度に着想した平面検出器に2種類のストリップ吸収体を用いる手法で実現する.原理実証のため,熱ルミネッセンス板を用いる.その後,その場読出しのフラットパネル検出器を用い,複雑被検体の測定を行う.
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次年度使用額が生じた理由 |
多変量解析によるエネルギー分解CT測定は,4x4に並べたSi(Li)検出器アレイを用いることを予定していた.しかし,この検出器配置では,空間分解能が十分ではない.この状況を打開するため,一般的なフラットパネル検出器を用いても,エネルギー分解CTを実施できる方法を着想した.これには,スリット吸収体を用いる.基礎実験として,5cmx5cmの領域を覆う幅1mmのスリットを自作したが約10万円ほどを要した.さらに細く,広い面積のスリットを製作したい.
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次年度使用額の使用計画 |
スリット吸収体として,まずは乳癌検出用のSOI(Silicon-on-Insulator)検出器用の2cmx2cm寸法のものを製作する.小さいサイズの吸収体を製作し,エネルギー分解CTが実行できることを確認し,また異なる材質を用いて製作し性能評価を行う(2種類で50万円).次に,CdTeフラットパネル検出器用の4cmx5cmのスリット吸収体を製作する(50万円).これは,京大病院で用いる人体用フラットパネル検出器約30cmx40cmの中心部分へも取り付けることができるようにし,人体用装置においてもエネルギー分解CTが可能であることを確認する.その後,このフラットパネル検出器用のスリット吸収体を製作したい.これはかなり高価になると予想しているので,フラットパネル検出器の中心部分1/2程度を利用することになるかもしれない(100万円).
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