研究課題
原子炉・核融合炉構造材料の劣化の主要因は、中性子照射による格子欠陥の蓄積である。従って、欠陥蓄積過程をその素過程である個々の欠陥の生成と移動および欠陥同士の反応にまで遡って明らかにし、欠陥蓄積過程の全容を解明できれば、あらゆる照射条件における炉材料の正確な寿命予測に役立つと考えられる。本研究では、耐照射構造材料の比較的単純なモデル金属を対象として、先進の電子顕微鏡法を駆使して、照射欠陥の挙動を解明することを目的とする。本年度の成果は多岐にわたるが、そのうちの一つを示す。中性子およびイオン照射による初期損傷(衝突カスケード)については、その構造(点欠陥集合体のサイズと空間分布)および照射欠陥蓄積過程における効果についての実験的知見が全く不足している。そこでここでは、高純度タングステンに対して、バンデグラフ・イオン加速器結合型電子顕微鏡(フランス JANNuS-Orsay)を用いて、セルフイオン照射-転位ループ形成過程の電子顕微鏡その場観察をおこない、超高圧電子顕微鏡(大阪大学)を用いた高エネルギー電子照射実験結果との比較を通して、転位ループ形成過程における衝突カスケードの効果を抽出することを目的とした。実験の結果、イオン照射では、同じはじき出し速さにおいても、転位ループ数密度が、電子照射の場合に比べて一桁程度高かった。我々のこれまでの研究により、転位ループは、本来は極めて低い活性化エネルギーで容易に一次元滑り移動を起こしてしまうため、高エネルギー電子照射によって形成される転位ループの数密度は、不純物によるトラップによって決められることがわかっている。この実験結果は、初期損傷として衝突カスケードを伴うイオン照射の場合は、それを伴わない電子照射の場合とは異なる転位ループ・トラップ機構が働くことを示唆する。
26年度が最終年度であるため、記入しない。
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