研究課題/領域番号 |
24360396
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
小田 啓二 神戸大学, 海事科学研究科, 教授 (40169305)
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研究分担者 |
山内 知也 神戸大学, 海事科学研究科, 教授 (40211619)
安田 仲宏 福井大学, 国際原子力研究所, 教授 (30392244)
谷村 嘉彦 日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究所, 副主任研究員 (20354714)
小平 聡 放射線医学総合研究所, 研究基盤センター, 研究員 (00434324)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 蛍光飛跡 / 中性子 / 個人線量計 / 潜在飛跡 / 光刺激蛍光線量計 / 中性子照射場 |
研究概要 |
蛍光飛跡については、市販の素子の特性評価実験と独自の画像取得手法の開発を平行して進めた。後者では、既存の共焦点方式顕微鏡の光学系の改造に着手した。しかしながら、現時点で取得できた像は当初の目的とした性能を下回っており、引き続き調整する。なお、蛍光飛跡画像の画像処理および解析プログラムのアルゴリズムは開発できている。一方、前者については、放射線医学総合研究所のHIMACからのイオンビームを用いて、市販の蛍光飛跡検出素子の重粒子線に対する校正試験や電荷分解能の評価を実施した。特に核破砕反応で生成したフラグメント粒子は5度程度のごく小さい放出角を持つことを蛍光飛跡検出法でとらえることができた。また、蛍光飛跡検出素子の一つ候補である銀活性リン酸塩ガラスのラジオフォトルミネッセンスと核飛跡の検出に関する基礎データを取得した。 蛍光飛跡検出器開発の参照実験として高分子中に形成される潜在飛跡の構造については、購入した顕微赤外分光システムを用いて集中的に実験を行い、予定以上の成果を挙げることができた。ポリアリルジグルコールカーボネート(PADC)、ビスフェノールAポリカーボネート(PC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリイミド(PI)の高分子に対して、プロトンや重イオン(阻止能は10~12,000keV/μm)を照射した。赤外スペクトル上にはエッチング可能な飛跡形成の閾値以下の阻止能を有するイオン照射によって変化が観察された。潜在飛跡がエッチング可能となるには、飛跡の径方向について隣り合ったC-O結合が2つ以上切断される必要があるとの知見が得られた。 実際の照射実験は次年度以降となるが、中性子検出特性を調べるために必要な、照射中性子フルエンスの決定方法及びそのモニタリング方法の開発を行い、第12回放射線遮へいに関する国際会議で報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
既存の共焦点方顕微鏡の2つの光学ラインの改造に時間を要した。取得画像の精度は高額な市販製品を超えていない状態で、今後全力を挙げて(調整に関して業者への技術依頼を含めて)取組む。なお、その他の項目、画像取得プログラムの検討、潜在飛跡形成機構の解明、中性子照射場の整備は予定以上のペースで進んでいる。これらを総合すると(2)と評価してもよいかも知れないが、本研究では光学ラインの改造が最も重要であるため、厳しい自己判断(3)とした。
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今後の研究の推進方策 |
まず、既存の共焦点方顕微鏡の2つの光学ラインの改造の完成に全力を挙げて取り組む。このためには、微妙なライン調整に関して、業者からの技術協力を含めて検討する。その結果によっては、調整過程の一部を発注することで、時間短縮を図ることにする。 検出素子については、予備実験から蛍光飛跡の発光ピーク強度は入射角度による依存性があることが分かっており、今年度、入射角度に対する蛍光飛跡強度の較正を行う予定である。また、ガラス線量計の蛍光飛跡イメージングにも技術展開する予定である。 また、潜在飛跡形成機構については、飛跡のエッチング可能性について「飛跡の径方向について隣り合ったC-O結合が2つ以上切断される必要がある」とする仮説を検証するために分析を他の高分子に広げる。
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次年度の研究費の使用計画 |
上記に説明したとおり、ビームライン調整を業者に発注することによって測定系の整備をできるだけ早めに完成させ、重イオン照射実験及び蛍光飛跡検出データ取得を進める。
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