研究課題/領域番号 |
24360404
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
加藤 之貴 東京工業大学, 原子炉工学研究所, 准教授 (20233827)
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研究分担者 |
劉 醇一 東京工業大学, 原子炉工学研究所, 助教 (70376937)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 蓄熱 / 排熱利用 / 伝熱促進 / 酸化マグネシウム / 膨張化グラファイト |
研究概要 |
水酸化マグネシウムと膨張化グラファイト(EG)を混合した複合化学蓄熱材料EMの最適化を行った。この材料は熱伝導度が高く成形性がある。反応器は熱交換機能が必要であり、材料を厚みのある平板状に成形できると熱交換面に密着でき、接触熱抵抗が低減できる。そこで基本形状として錠剤型(タブレット型)に材料を成形しその蓄熱性能を熱天秤で反応速度、伝熱性能を測定し。得られた蓄熱材料を用いて充填層型反応器にて化学蓄熱実証試験を行った。 まずEMの作成方法の最適化を進めた。水酸化マグネシウムを事前に水に懸濁させ、その後EGを添加し、混合、撹拌、乾燥プロセスの手法の改良を進めその後、材料を圧縮成型しタブレット(直径 7 mm×高さ4 mm)化を実現した。熱天秤を用いた反応動力学的解析を行い、熱伝導度測定装置にて熱伝導度を測定した。従来の水酸化マグネシウム材料より高い反応性を持つことを見出した。また、従来の水酸化マグネシウム材料より高い伝熱性を有することを実証した。得られた蓄熱材料候補について反応特性の反応動力学的解析を進めた。タブレット材料の最適化を行い水酸化マグネシウム:EG質量比 = 8 : 1が適した混合比であることを見出した。充填層型反応器に得られたタブレット型EM化学蓄熱材料を充填し、脱水・水和反応試験を行った。参照試験として水酸化マグネシウム単体のペレット(直径2mm×長さ5-10 mm)の充填層試験を行った。EMは単体ペレットに対して反応速度が脱水、水和反応ともに早いことを見出した、これは熱伝導度の向上による反応熱の迅速な移動が実現したためと判断された。結果として単位時間の単位反応器体積あたりの蓄熱量も大きく、EMが従来材料に比べ優れていることが確認された。あわせて繰り返し反応実験に対する耐久性を確認した。以上から化学蓄熱実証試験装置の開発にあたり、必要な情報を獲得することに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
水酸化マグネシウムと膨張化グラファイト(EG)複合材料のタブレット化を実現し、従来材料に比べて高い熱伝導度、高い反応性を有した材料開発が成された。この材料は目的とする化学蓄熱装置に対してより有用である。目的とする中温排熱をより効率良く貯蔵、出力できることとなった。
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今後の研究の推進方策 |
材料のさらなる最適化を進め、従来の水酸化マグネシウム材料より高い反応性、伝熱性を有する材料の開発を進め、目的とする化学蓄熱装置の高性能化を進める。また、充填層試験を行い蓄熱装置としての性能実証を進める。並行して充填層反応器の数値計算モデルを作成し、定量的な性能評価を進める。目的とする中温排熱の貯蔵、出力性能を従来材料と比較して、優れていることを実証する。
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次年度の研究費の使用計画 |
本年は水酸化マグネシウムと膨張化グラファイトの混合により成形性が高く、化学蓄熱に適した複合材料EMになることを見出した。この材料調製の最適化と反応性評価に専念した。このため他に予定していた種々の複合材料調製ならびに材料の量産化は次年度以後に行うこととした。さらに充填層試験もEMについて限られた条件で行ったため、H25年度予算に材料購入、材料評価費、充填層反応器整備に未使用分が発生したので、次年度に活用することとした。 平成26年度は最適化した水酸化マグネシウムと膨張化グラファイト複合ペレットについて充填層反応器を用いて試験を多数回行う。そこで充填層反応器の改良、材料の大量生産の検討を進める。材料費、充填層装置整備費に研究費を用いる。また、候補として見出したEM材料について材料の実用耐久性を評価するため、長時間連続実験を行う。これにむけての装置の自動記録化を進めるために研究費を用いる。とくに計測データ記録のための設備を整え、反応状況を詳細に記録する対応を進める。
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