研究実績の概要 |
研究代表者の研究室でこれまでに開発した低温噴霧熱分解法とボールミル粉砕法を組み合わせた独自の合成法を用いて、Li2MP2O7(M=Fe,Mn)/Cナノ複合体の合成を、噴霧熱分解温度、粉砕速度、粉砕時間、粉砕時に添加するアセチレンブラックの量、粉砕混合処理後の焼成温度を変えて行った。その結果、それらの操作条件を最適化することにより、不純物相を含まない目的物質(Li2FeP2O7/Cナノ複合体)を合成することができた。この試料の粒子形態をSEMで観察したところ、100 nm以下のLi2FeP2O7一次粒子の凝集体であった。また、TEM-EDS分析により、カーボンの分布状態を観察したところ、凝集体表面にカーボン層が形成されていることを確認した。これに対して、Li2MnP2O7/Cの合成では、合成条件を最適化した場合でも、純粋な目的物質は得られず、LiMnPO4, Mn2P2O7, Li4P2O7の不純物が僅かではあるが確認された。 様々な合成条件で得られたLi2FeP2O7/Cナノ複合体材料を正極活物質として用い、負極にリチウム金属を用いたハーフセルを作製し、室温でリチウム二次電池特性を調べた。その結果、最終的に理論容量(110 mAh/g)の98.5%の初期放電容量を得ることができた。さらに、サイクル特性も良好であった。 これに対して、Li2MnP2O7/C複合体材料では、0.1Cの放電速度において72 mA/gの放電容量(60℃)を示したが、4V付近におけるMnの酸化還元反応に伴う明確なプラトーは確認できなかった。しかしながら、これまで、この材料についての電気化学的特性に関する報告はほとんどなく、今回得られた結果は、新規で独創性に富んだものである。
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