研究課題/領域番号 |
24370001
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
藤原 晴彦 東京大学, 新領域創成科学研究科, 教授 (40183933)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | LINE / レトロトランスポゾン / 転移機構 / 核移行 / リボヌクレオタンパク質 |
研究実績の概要 |
LINE(別名non-LTR型レトロトランスポゾン)はほとんどの真核細胞に存在し、最も活動的な転移因子にも関わらず、その特有な転移過程の多くは解明されていない。LINEのmRNAは転写・翻訳されると、コードしたORF1、ORF2タンパク質とリボ核タンパク質(RNP)複合体を形成し、核内の標的サイトへ移行し、標的DNA上で逆転写されるが、本研究ではLINE・RNPの(1)形成過程(2)核内移行(3)標的DNAとの相互作用に関わるLINE内部の機能的な構造を解明することを目的とした。
(1)28SrDNA特異的LINE・R2Olの転移を調べる過程で、5’UTR内部にあるリボザイム活性がR2Olの上流28bで28SrRNAからの共転写産物を切断することが確認された。リボザイム活性を失活させるとR2Olの転移活性が低下し、このとき切断されない上流の28SrRNA配列が長くなるほど転移活性の低下が顕著になることが判明した。転移活性が低下した原因は、RNAの安定性や翻訳効率の低下でなく、LINEのRNP形成が適切に行われない可能性が示唆された。このことは、5’UTRが適切な長さであることがRNP形成に重要であることを示した初めての報告である。(2)R1, R2, R7などrDNA標的特異的LINE(R-element)を用いて核内移行を調べたところ、R1, R7についてはORF2タンパク質が核内への移行を主に担っていることがわかり、R2Bmタンパク質についても核内への移行が確認された。(3)テロメア特異的LINE・SART1のORF1内部にあるZinc fingerドメインを破壊したコンストラクトを用いるとLINE自身のmRNAと結合できなくなることが確認された。RNP形成におけるORF1タンパク質の役割は主にmRNAとの結合であることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
rDNA特異的LINE・R2Olを用いて5'UTR中にあるリボザイムが転移活性に及ぼす影響を見ることに成功した。共転写産物であるrRNAから切り離されないとR2Olの転移活性は下がり、転移活性低下の原因は適切にRNPが形成されないためではないかと推測している。LINEのRNP形成に関して初めて示された結果で、重要な進展があったと評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
R1, R2, R7がいずれも核内移行していることは明瞭となったが、rDNAの存在する核小体への移行はまだ十分に確認されていない。昆虫細胞において核小体の局在性を確認する明確なマーカーを使う必要があると考えられ、今後はマーカーとして適切な抗体や適切な手法を用いて核小体移行のプロセスを明らかにしたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成26年度に、LINEのRNP形成の解析を行い、その結果をもとに逆転写活性を測定するとともに学会での発表を予定していたが、RNP形成で新規の事実が見つかったため、計画を変更して転移活性測定をおこなうこととしたため、未使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
転移活性の解析と学会での発表を次年度に行うこととし、未使用額はその経費に充てることとしたい。
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