研究概要 |
前年度までに出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)の細胞外郭(細胞壁や細胞膜)、核DNA領域、アクチン、液胞、ミトコンドリア、微小管、微小管集合中心、セプチンリング、シスゴルジ、トランスゴルジ、オイル顆粒などからデジタル画像の抽出を行い、細胞構造体の定量解析を行える共通システムを構築したが、今年度は液胞画像の抽出データを基にして液泡の酸性化について解析を行った。 酵母の液胞は酵母細胞のおよそ30%を占める単層の液胞膜によって囲まれたオルガネラである。このオルガネラは、細胞内で最も酸性化された動物細胞のリソソームに相当するオルガネラであり、タンパク質の分解やイオン・代謝物の貯蔵、解毒作用といったさまざまな生理的機能を果たしている。これらすべての生理的機能は液胞内腔の酸性pHと関係しており、液胞膜に存在するプロトン輸送性ATP加水分解酵素(V-ATPase)によって液胞の酸性化が引き起こされることが知られている。本年度は、液胞V-ATPaseの活性を特異的に阻害する薬剤を用いて液胞の酸性化を抑制し、その条件下での液胞タンパク質の挙動を網羅的に明かにすることを目的とした。 選定した90の液胞局在タンパク質について、GFP融合タンパク質の局在を定量的に観察した。目視による局在分類とHuh et al., 2003の局在分類との一致度は73%、不一致19%、残り8%が不明確な局在であった。さらに阻害剤を用いた実験から液胞の酸性化は液胞局在タンパク質のおよそ23%の局在に影響を与えている事が明らかになった。またそれらの局在変化の内容は、細胞質に流出するものが大半を占めており、液胞局在タンパク質の9つの複合体のうち5つの複合体でそれらの構成因子が異なる挙動を示す事が明らかとなった。
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