研究課題/領域番号 |
24370003
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
石井 浩二郎 大阪大学, 生命機能研究科, 招へい准教授 (40360276)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | ゲノム / 染色体 / セントロメア / キネトコア |
研究概要 |
今年度、まずは機能不完全な状態のネオセントロメアと正常機能が確立されたネオセントロメアの間で分子構造基盤を比較し、その間で起こった分子的な変化の解明を試みた。私たちはこれまでに、分裂酵母3番染色体セントロメア破壊の復帰変異として得られるネオセントロメアは機能が不完全であるが、その不全性はその後30世代程度の細胞増殖の間に再現性よく自然解消されることを見出している。機能正常化したネオセントロメアでは隣接するrDNAリピートの反復回数が極端に減っていることに基づき、今年度はその機能正常化へのヘテロクロマチンの寄与を解析した。ヘテロクロマチン特定的なヒストン化学修飾(H3-K9Me)やヘテロクロマチンタンパク質Swi6の存在量を機能正常化の前後で比較した結果、正常化したネオセントロメア近傍で特異的にヘテロクロマチンが増幅されていることを確認した。しかしながら、Swi6やH3-K9Me修飾酵素への変異導入によってヘテロクロマチンの欠損を引き起こしてもネオセントロメア機能は元の不完全状態にまで低下することはなかった。一過的にヘテロクロマチンが必要とされる可能性とヘテロクロマチン以外の因子の関与の可能性の2つについて、検証を進めている。一方で、ヘテロクロマチンと機能正常化の直接的な関係性を解析するため、人為的ヘテロクロマチンのネオセントロメアへの付加実験を行った。その結果、ヘテロクロマチン付加は不完全なネオセントロメアの機能正常化を生み出した。さらにこの場合には、ヘテロクロマチンの欠損導入はネオセントロメアの機能性を元の不完全なものに低下させた。従って、rDNAリピートの減少によるヘテロクロマチン因子以外の関与が自然発生的なネオセントロメア機能正常化には考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究ではセントロメアの機能変遷過程の分子背景と作用機序を解明することを目的としているが、今年度計画していたヘテロクロマチンの機能的関与の検証は、自然発生するネオセントロメア機能正常化と人為的な機能正常化の双方の解析で完了した。またセントロメア構成基本因子とその制御因子の作用機序解析も順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに得られた知見に基づき、研究を更に発展させる。これらは研究計画に則った進捗と考えている。具体的には、今年度見出したヘテロクロマチン作用の本質の究明を、これまで以上に遺伝学的解析、ゲノム生物学的解析、生化学的解析、細胞生物学的解析を適切なバランスで組み合わせて推し進める。今年度計画していたヘテロクロマチン機能検証解析が当初想定していたよりもスムーズに完了し、次年度の使用額に加えることになった。次年度は、本年度の実験結果を受け、ChIP-chip解析の作業要員が多く必要となることが予想され、その部分の人件費に組み込んでいく計画である。
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度も研究計画のとおりに研究内容は進展したが、研究の進捗に合わせて必要に応じたかたちで研究費を執行したたところ、想定よりもスムーズに研究が進展したため、結果的に当初の見込額と執行額が異なった。 これまで研究を進める上で必要に応じて研究費を執行してきたため、当初の見込額と異なってきているが、研究自体は順調に進んでいるため、使用計画に変更はなく、前年度の研究費も含めて当初の予定通りに研究計画を進めていく。
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